民間の半額以下ということで人気のある特別養護老人ホーム(特養)。40万人近い「入所待ち」が社会問題になっていますが、あるケアマネージャーは「担当地域では空きがある」といいます。しかも「そういう地域は少なくないはず」というのです。なぜ空きがあるのに、待機者がいるのでしょうか――。
民間の半額以下「特別養護老人ホーム」の現実とは?
在宅での老親の介護が難しい状況になった場合、考えざるをえないのが施設への入所です。なかでも入所希望者が多いのが、特別養護老人ホーム(特養)。全国に約9500カ所あり、約57万人が暮らしています。
社会福祉法人や地方自治体が運営する公的施設であり、費用が安いのが特徴です。毎月の費用は介護サービス費と生活費をあわせて月10万円ほど。「入居一時金」はありません。一方、民間の有料老人では、一般的に毎月20万円以上の費用がかかり、さらに数百万円の入居一時金を求められます。
そのため希望する特養に入れない「待機者」がたくさんいます。厚生労働省によると、2016年4月時点での待機者は36万6000人です。このため「空きが出るまで数百人待ち」とか「入所するまで数年かかった」といった話をよく聞きます。
▼待機者が約37万人「でも、空きのある特養は結構あるんです」
ところが、ケアマネージャーのMさんは「実は入所者で埋まっていない、つまり空きのある特養は結構あるんです」と言うのです。
「もちろん地域差はあると思います。すべての特養が満員で多くの人が順番待ちをしている地域もあるでしょう。でも、私が担当しているエリア(首都圏某市) では2カ所の特養で空きがあります」
全国的にも特養の待機者が減少傾向にあることは確かなようです。その要因のひとつは、2015年4月に施行された介護保険法改正です。
それまで特養には要介護1以上であれば入れたのですが、改正によって入所条件が原則要介護3以上になりました。要介護1と2の人が除外になった分、待機者は減ったわけです。
しかし、Mさんは、「ほかにも要因がある」といいます。それは「特養に個室のユニット型が増えたこと」です。