生き残るために独自の技術を磨く
問題は「排ガス不正」の温床にもなった窒素酸化物(NOx)などの有害物質だ。多くの自動車メーカーはマフラーに装置を付けて有害物質を浄化している。こうした浄化装置は「後処理工程」とも呼ばれる。これに対して、マツダは、エンジンに燃料を噴射するメカニズムを改良し、後処理工程なしに排ガスを浄化する技術を開発した。装置がなければ、価格も安くできる。
マツダはディーゼルエンジンに自信があったからこそ、CX-8ではディーゼル車だけで勝負に出た。今回、次世代技術「スカイアクティブD2.2」をさらに改良。最高出力や最大トルクをパワーアップさせたうえで、燃費も向上させることに成功した。燃料満タン(72リットル)での航続距離は1137km。東京から九州まで走ることができるそうだ。
開発責任者の松岡英樹主査は、「多人数SUVでも、ディーゼルならではの立ち上がりの良い加速感や高トルクの走りができるようにしました。また、3列目の人も含めてすべての乗員がゆったり座れる快適性と、全員が普通に会話できる静粛性を実現させました」と話す。
マツダはプラグインハイブリッド車やEVも開発している。19年にはこれまでにないEVを出す予定だという。だが、価格競争力の高い自慢のディーゼルを手放す気はない。
「パワートレインは国ごと、地域ごとのニーズに応じたマルチソリューションで対応していく。クリーンディーゼルについては、今後の規制強化にも対応し、お求めやすい価格でこの技術を提供できると自信を持っている」(小飼社長)
1000万台級の大手がしのぎを削るなかで、グローバル販売台数が155万台のマツダは「ニッチメーカー」のひとつだろう。そんな企業がこれからも生き残っていくためには、独自の技術を磨いていく必要がある。大手とは違う「マツダらしい車」をどうつくっていくか。CX-8はそのひとつの答えだといえそうだ。