「そんなにイケてないはずじゃなかった」のに気がついたらアラサーになっていたという女子三人による「東京オリンピックまでに結婚する」という目標をめぐって繰り広げられるドタバタを支柱とした本作は、不倫、元彼、ダメ男などに翻弄されるタラレバ娘たちの恋愛模様が「精神的リストカット」とまでいわれ大きな評判を呼び、コミックの累計発行部数が330万部超というヒットとなりました。

「精神的リストカット」という自嘲

しかし吉高由里子さんが主演したドラマの方はそれほど振るわなかったようです。 その原因は様々かと思いますが、「結婚先延ばし」説を無批判に描いた結果、20~30歳代からは共感を得られず40歳代からは反感を買ったという点もあるかなと思います。私の周りにいるぼちぼち暮らしたい派の友人たちも『逃げ恥』は一生懸命見ていたようですが『タラレバ』の反応は今一つでした。

原作ではこのミスマッチがギャグとしてうまく昇華されていて、「結婚をしなくてはならない」との強い前提を死守しながらも現実のままならなさに打ちひしがれるタラレバ娘たちの様子を我が身に照らし「精神的リストカット」と自嘲する効果につながったように思います。しかしそのテイストをドラマにうまく組み込めなかったのも、 視聴率が振るわなかった原因の一つなのかなと思います。

つまり、2作の反応の違いは、「結婚したくないわけではないが、どうするのかは場合による」という人生観をもつ20~30歳代の増加と関係しています。おそらく現在の「生涯未婚時代」をつくっているのは、そうした人生観なのです。

永田夏来(ながた・なつき)
社会学者
1973年、長崎県生まれ。2004年早稲田大学大学院にて博士(人間科学)取得。現職は兵庫教育大学大学院学校教育研究科助教。専門は家族社会学。共著に『入門 家族社会学』(新泉社)、『ポスト〈カワイイ〉の文化社会学』(ミネルヴァ書房)。