乳がん罹患を公表し、自身のブログで病状などを公開していた故・小林麻央さん。小林さんを巡る報道をきっかけに乳がんに関する関心度は高まったが、偏見や誤解は多い。そこで、乳がんサバイバーであるFPの黒田尚子さんに「乳がんとお金」について全3回にわたりリポートしてもらった(今回は第2回目)。
第1回目の骨子は、「乳がんが若い世代に増えている」「乳がんはかかりやすいが治りやすい」「5年相対生存率は93.6%で10年相対生存率は81.7%」「大都市圏と東日本の死亡率が高い」「生存率の向上によりがん治療費の長期化・高額化の問題も出てきた」という内容だった。

乳がんになったら、いくらかかるのか?

乳がん患者の生存率は年々伸びている。しかし、このことを単純に喜べない状況もある。なぜなら、がんと共に生きる期間が長引くことによって、「がん治療費の長期化・高額化」と、「仕事と治療の両立」の2大問題が顕在化しているからだ。

まず、がん治療費の長期化・高額化の問題について見てみよう。

おおまかに言って、がん治療費は、以下の3つに分けられる。

1) 「病院に支払う医療費」(診察料、治療費、入院費など)
2) 「病院に支払う医療費以外の費用」(差額ベッド代、入院時の食事代の一部、先進医療の技術料、診断書作成費など)
3) 「病院以外でかかる費用」(交通費、入院時の日用品費、お見舞い返し、ウイッグ、健康食品・サプリメント、家事・育児の代行サービスなど)

まだがんを経験していない人は、がんに罹患すると(1)が高額になると思うかもしれない。しかし、がんであっても、健康保険や高額療養費といった公的制度が利用できるため、そこまで高額になるわけではない。がんの医療費がイメージよりも安い理由のひとつに入院期間の短期化がある。

▼医療費の平均自己負担額 乳がんは年間66万円

13年前に乳がんと診断され、昨年乳がんが再発したというA子さん(60代)は言う。

「最初の手術のときは、3週間以上入院していたのに、次の入院は1週間くらいで退院と言われてびっくりしました。お友達がまだいると思ってお見舞いに来てくれたのですが、もう退院しちゃってたんです(苦笑)」

ちなみに、がんの部位別の自己負担額を見ると、乳がんは年間66万円となっている(※3)。ただ、加入している民間保険給付金や高額療養費、医療費還付などの償還・給付額が44万円あるので、これらを差し引いた実質的な負担額は22万円となる。※3 厚生労働省第3次対がん総合戦略研究事業「がんの医療経済的な解析を踏まえた患者負担の在り方に関する研究」2012年度報告書