国民から選ばれた6人のシロートが殺人罪などの重大事件の判決プロセスに加わる裁判員裁判。短期集中で評議する濃密な時間と質問のやりとりの中には、すべてのビジネスパーソンが見習うべき「会議の作法」のエッセンスが含まれていたのだ。その内容とは――。

裁判員裁判は「いい会議」のエッセンスが詰まっている

2008年に始まった裁判員裁判では、国民から選ばれた裁判員6名とプロの裁判官3名の計名で、審理から評議、判決までが行われる。対象となるのは殺人罪、強盗致死傷罪、現住建造物等放火罪などの重大事件だ。

裁判にかかる日数は事件によってまちまちだが、通常は初公判から判決まで連続して3~4日間というものが多く、期間中は休廷時間や昼食を挟むものの、朝から夕方までスケジュールが組まれ、裁判所の外に出ることはできない。もちろん夕方以降は家に帰れるが、守秘義務があるので裁判の詳細を誰かに話すわけにもいかない。

被告人の人生がかかっている裁判で9分の1の票を持つ裁判員。経験者に聞いたところでは、そのプレッシャーは相当きつく、なかなか寝付けないほどだそうだ。慣れない経験ということもあるが、なんといっても判決を決める評議までには自分なりの結論を出さなければならない(棄権は認められない)ことが重圧になるという。

▼見ず知らずの6人のシロート裁判員は、超真剣

見ず知らずの6人だから、最初のうちは休憩時間などに交わす会話もさしさわりのない範囲。2日目以降になるとキャラクターもわかってくるが、事件について突っ込んだ話をするほどの関係ではない。せいぜい、多少の意見交換ができる程度だ。

だから、公判でのやりとりを聞く姿勢はおのずと真剣になる。見た目がチャラい若者だろうと、いかにも面倒くさそうな顔をしているオヤジだろうと、裁判員席でふざけたり、居眠りしたりする人は見たことがない。

賛否両論あるものの、裁判員制度が施行10年目の今年まで維持されてきた理由は、裁判員を引き受けたからにはマジメに責務を果たそうとする市民の姿勢にあるのだと思わせられる。