ATMで現金を引き出す際の手数料、他行口座あての振込手数料の引き上げ、無料利用できる条件を厳しくする銀行が増えている。三井住友銀行は2016年10月、平日時間外に本支店のATMで出金した際に発生する手数料を一律108円とした。それまでは、利用口座の預金残高が10万円以上あれば手数料が掛からなかった。ゆうちょ銀行も同月に、みずほ銀行は12月に他行口座あての振り込みの、各手数料が無料になる条件を引き上げた。
銀行の出金や振り込みの手数料体系は自店内、自行内、他店あてと様々な形があり非常に複雑だ。そのため、一概にどれくらい利用者の負担が増えているかを言うのは難しいが、確実に負担は増加傾向にある。
理由のひとつはリーマンショック以降の長引く低金利政策が銀行の収益を圧迫していることだ。今後マイナス金利の深掘りがあれば、手数料値上げの動きは加速していくだろう。
そもそもこれまでは、日本の銀行口座の料金体系は銀行にとって非常に不利なものだった。日本の銀行口座では一般的に管理手数料がかからないが、海外では事情が異なり、たとえばドイツ銀行は預金口座の管理に月間10ユーロかかる。口座の管理には基幹システムの運用費や人件費などが発生するため、管理手数料は本来銀行にとって必要なものである。日本の銀行は金利が高かった30年ほど前には預金からの収益(利ざや)でその不足分を補うことができたが、現在は状況が変わっている。
ここ数カ月の手数料の値上げで銀行が口座管理にかかる費用を回収できるわけではなく、「時間外のATM利用が増えたら収益が改善する」ということもない。つまり現在の状況は、利用者が不要不急のATM利用を避ければ利用者と銀行の双方にメリットがある、ともいえる。今後は、手数料のかからないデビットカードなどの利用が増加するだろう。