親が貧困層か富裕層のどちらに属するかによって、子どもの遊び・趣味・習い事などの体験率には極めて大きな差がある――。

職業によって聞く音楽ジャンルはこんなに違う!

フランスの社会学者、ピエール・ブルデューが『ディスタンクシオン』という本を書いています。社会学の世界では、広く知られた名著です。「ディスタンクシオン(distinction)」とは、フランス語で「差異」という意味です。

この本では、人々の趣味や嗜好が階層によって大きく異なることが明らかにされています。

たとえば、読む雑誌を調べてみると、ホワイトカラー層は文芸誌を好むが、ブルーカラー層は大衆誌を好む。服装、映画、スポーツなどの嗜好にも、階層による違いが明瞭に出るのだそうです。

まさに「差異」ですが、これは階層がはっきりしている西洋の話であって、日本ではこういう現象は見られないのではないか、といわれます。なるほど、教育社会学の授業でこういう話をしても、ピンとこない学生さんが多いように思います。

しかし、実証データがないわけではありません。

柴野・菊地・竹内編『教育社会学』有斐閣(1992年)という本の161ページに、趣味の職業差を鮮やかに示した統計図が載っています。横軸にクラシック音楽鑑賞、縦軸にポピュラー音楽・歌謡曲の鑑賞実施率をとった座標に、複数の職業を配置したグラフです。

これをみると、教員などの専門的職業従事者は右下にあり、販売職や労務職は左上に位置しています。前者はクラシック音楽を好み、後者は大衆的なポピュラーや歌謡曲のほうを好んで聴く、ということです。

この図は、1986年の総務省『社会生活基本調査』のデータをもとに作図されたようですが、最近のデータでも、こういう傾向が出てくるでしょうか。