参議院調査室が指摘したオーケストラの「役割」

日本には現在、いくつのプロのオーケストラがあるかご存知だろうか。公益社団法人日本オーケストラ連盟の2014年度時点のデータによると、33のプロ・オーケストラが活動している。しかし、その経営基盤は脆弱だ。日本のプロ・オーケストラの実態を参議院調査室の「調査と立法」2016年12月号の「日本のオーケストラの課題と社会的役割」から見ていこう。

日本では、年間に約3800回の演奏会が行われ、約425万人が来場している。しかし、経営基盤は脆弱で国や地方からの公費助成なしには活動が困難な状況にある。14年度のプロ・オーケストラの公演に要する人件費や事業活動に関する支出は約263億8900万円。

一方、収入は約270億円あるものの、演奏収入は約142億2700万円しかなく、大幅な赤字状態だ。これを補っているのは、国・地方自治体の支援66億1100万円、民間支援53億6800万円などだ。

日本のプロ・オーケストラの経営形態を大別すると、(1)特定団体による支援(2)自主運営型(3)地方自治体の支援(4)地方自治体の文化振興財団等が運営――の4つに分類することができる。

(1)の特定団体による支援では、NHKから約14億円の交付金を受けているNHK交響楽団や読売新聞社等から約15億円の事業契約金収入のある読売日本交響楽団などが当てはまる。

(2)の自主運営型では、東京フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団等など、多くのプロ・オーケストラがこれに当たる。収入は、演奏収入が大半で、残りは民間からの寄附等というところが多く、定期会員を中心としたチケット収入のため、経営基盤が脆弱だ。

(3)には札幌交響楽団、群馬交響楽団などで地方自治体から補助金を受けているケースが多い。

(4)は比較的に新しい形態で、石川県音楽文化振興事業団が石川県立音楽堂と共に運営を行っているオーケストラ・アンサンブル金沢、兵庫県芸術文化協会が運営するホール専属の兵庫芸術文化センター管弦楽団、京都市音楽芸術文化振興財団が京都コンサートホールと共に運営する京都市交響楽団などがある。