「車両単独」による「工作物衝突」

超高齢社会に突入している日本では、高齢者が交通事故の主役に躍り出ている。警察庁が1月19日に開催した第1回「高齢運転者交通事故防止対策に関する有識者会議」の資料から、高齢者による交通事故の実態を見てみよう。

2005年から15年までの間に、交通事故による死亡事故件数は逓減傾向を辿っている。05年に6165件だった死亡事故は、15年には3585件に減少した。

しかし、これに反比例するように75歳以上の高齢運転者による死亡事故は08年の410件をボトムに、14年には471件にまで増加している。死亡事故が逓減しているため、死亡事故全体に占める75歳以上の高齢運転者の割合は一貫して増加傾向を辿り、05年の7.4%から14年には12.9%まで上昇している。

総人口の中で高齢者の占める割合が増えているから、といえなくもないが、それだけではない。15年12月末現在の運転免許保有者10万人当たりの年齢層別死亡事故件数では、30~39歳と40~49歳が3.3件で最も少なく、16~24歳は7.6件の発生件数と30歳代、40歳代の倍以上。だが、75歳以上ではそれも上回る9.6件という割合で死亡事故が発生している。

75歳以上の高齢運転者死亡事故には、いくつかの特徴的な点がある。15年度中の死亡事故から類型別に分析すると、75歳未満の運転者が「人対車両」の事故で「横断中」の人との事故が28%と圧倒的に多く、次いで「車両単独」による「工作物衝突」が14%となっているのに対して、75歳以上の高齢者は「車両単独」による「工作物衝突」が24%と圧倒的に多く、次いで「車両相互」の「出会い頭衝突」が17%、「車両相互」の「正面衝突」が14%となっている。

さらに、75歳未満の運転者の死亡事故が昼間47%、夜間53%の割合で発生しているのに対して、高齢者は昼間83%、夜間17%と圧倒的に昼間に発生している。高齢者は夜間外出が少ないのだから当然といえば当然なのだが、それは夜間外出が増えた場合には、高齢者の事故が飛躍的に増加する可能性を秘めていることにもなる。

また、死亡事故の発生場所と居住地との関係を見ると、75歳以下が居住地46%、他の市町村54%の割合で事故を起こしているのに対して、高齢者は居住地で67%、他の市町村で33%と、圧倒的に居住地で事故を起こしている。半面、これは高齢者が遠出をすることなく、普段の生活圏の中で自動車を運転していることの表れでもあろう。

死亡事故の要因を見ると、75歳未満では「安全不確認」が26%、漫然運転などの「内在的前方不注意」が24%と多いのに対して、高齢者はハンドル操作ミスやブレーキとアクセルの踏み間違えといった「操作不適」が29%、「安全不確認」が23%となっている。

まとめれば、高齢者は居住地で昼間、車両単独で運転操作ミスによる事故を起こしている……ということになる。これを逆説的に捉えれば、高齢者が夜間に居住地以外に出かけるケースが増加すれば、死亡事故が一段と増加する可能性があるということになる。