上司の考えを先読みするのが仕事なのか

柴田昌治 スコラ・コンサルト プロセスデザイナー代表

ビジネスにおいて正解は必ずしも1つではありません。自分が意識する範囲や状況が変われば、導き出される答えも自ずと変わるのが当たり前です。常に自分にとっての「全体」を意識していれば、変化に対しても柔軟に対応できます。

「自分にとって全体を意識する」と対照的な思考が、前回触れた「上司の的を当てに行く」「上司が好む答え」を探る、です。つまり、自分にとっての全体が、無意識のうちに上司と自分との関係に限定されてしまっている状態です。答えは上司が持っているという前提で、上司の好む答えを探ろうとしているのです。

ある大手企業の課長は、典型的な「上司の的を当てに行く」仕事の仕方をしてきた「優秀な人」です。ところが新設された部署に移ってからは、慣れない仕事だったこともあり、当てに行く的はことごとく外れ、提案が突き返されてばかり。納得がいかなく不平不満を口にしていました。そういう状況を見て、あるとき本人にこう伝えました。

「あなたはいつも上司が何を望んでいるかばかりを読み取ろうとしているでしょう? それは自分の頭では必要なことを考えていないということですよ」

私が問題点を指摘すると、課長は「えっ!? 上司の考えを先読みするのが仕事だと思っていました」と答えました。

その上司とも一緒に仕事をしたことがある私はこうアドバイスしました。

「それでは本当の意味で仕事をしているとはいえない。上司はあなたが自分の頭で徹底的に考え抜いて仕事をすることを望んでいると思いますよ。自分の頭で考えて、その答えを上司にぶつけてみてください」