「エキスパート」は全社的な視野を持つ人

柴田昌治 スコラ・コンサルト プロセスデザイナー代表

最近は減ってきてはいますが、社員のなかでも専門的な知識や技術を持つ「エキスパート」と呼ばれる人がいます。確かに、1つの部門に長く在籍すると、専門性が高くなることは間違いありません。彼らは人事のプロとか財務の達人などと周囲からも認められ、自分自身もそれに誇りとやりがいを持って働いています。

しかし、昨今のようにビジネス環境が大きく転換されようとしているときにそれでいいのでしょうか。自部門さえ何とかなっていればそれでいい。関心があるのは自分の部署やチームだけというのでは、社員としての役割を果たすことはできません。周囲が大きく変わったのにも関わらず、自分は何も変わらないというのでは、組織全体にとって大きなマイナスになってしまいます。

人事や財務といった間接部門に求められるのは、会社の総論としての経営戦略を各論に落とし込み、現場での実行をサポートすることです。自社の経営戦略に大きな転換があったならば、自分たちの仕事での判断基準や中味も変えていく必要が出てきます。本当の意味の「エキスパート」というのは全社的な視野を持つ人です。

もちろん、間接部門だけではありません。先日もある企業で「海外展開」をテーマに語り合ったのですが、国内営業部も率いる部長は「私には関係ないでしょう」とまったく関心を示そうとしないのです。しかし、少しアンテナを海外営業に向ければ、新しい販路が拡大できるかもしれない。そんなビジネスチャンスをみすみす失ってしまっていることになります。