過去の成功体験を過信してはいけない

柴田昌治 スコラ・コンサルト プロセスデザイナー代表

一般に「即断即決」ができるビジネスパーソンは優秀だと思われがちです。おそらくそれは、過去の豊富な経験をもとに、条件反射的に答えを出している場合も少なくありません。前提条件が同じなら、それでもいいでしょうが、こうした人は、環境が激変し会社を取り巻く状況が変わってしまっても、過去の成功体験をそこに当てはめようとします。

つまり、以前はこれで対処できたから、今度も大丈夫だろうと「先入観」で答えを出してしまいます。しかも、その傾向は大きな成果を残してきた社員ほど顕著です。けれども、それは危険です。過去の経験を過信しすぎ、同じように判断した結果、取り返しのつかないミスジャッジになってしまうことも少なくありません。

しかし、柳の下にドジョウはそう何匹もいません。ビジネスではその都度、謙虚にならないとダメ。だから、私たちに必要なのは「そもそも」と、前提条件を問い直していくこと。そうした姿勢があって初めて深い思考と判断ができるわけです。そして、そうすることによって、そこに隠れているリスクも見えてきます。

さまざまな選択肢を検討し、優先順位も考え、「ああでもない、こうでもない」と悩んで考え抜くからこそ、より優れた結論に到達するのではないでしょうか。それを面倒くさがり、なかば機械的に過去の経験に頼るのは禁物です。試行錯誤をしているときの人間は間違いなく前向きに進んでいることを確信してください。