まさか、あの人が――何かの事件の犯人が明らかになったとき、犯人の知人や近所の住人が驚く姿をテレビニュースでよく見ますね。普段は礼儀正しかった、大人しそうな人だった。意外だとみな口々に言います。

普通の会社でも、思わぬ人が横領や不正を働いていたとわかったり、暴行事件を起こして新聞沙汰になることがあります。最近のニュースだと、神奈川県横浜市の大口病院で入院患者の不審死が相次ぎ、院内での事件ということで病院関係者の犯行も疑われています。もしかしたら、あなたと同じフロアで働く、一見すると普通の同僚が、犯罪者である可能性もあるのです。

犯罪心理学では、犯罪をする人としない人の間には明確な差があると考えられています。犯罪者を統計的に分析すると、明らかな危険因子があるとわかっているのです。なかでも大きな危険因子はビッグ4と呼ばれており、「犯罪歴」「反社会的交友関係」「反社会的認知」「反社会的パーソナリティ」が挙げられます。反社会的認知と反社会的パーソナリティとはどのようなものでしょうか。

「ゴミの分別をしない人」と「低い社会階層」危険なのは?

反社会的認知や反社会的パーソナリティを抱えている人は、心のどこかで「法を犯してもいい」「誰かを傷つけてもいい」といった、規範を軽視する歪んだ価値観を持っています。それまで仕事が丁寧だったりハラスメントをしたことがない大人しい人でも、「ゴミの分別をしない」「シートベルトを締めない」「喫煙禁止区域でタバコを吸う」といった行動をしている人は、反社会的な価値観の持ち主の可能性があるので要注意です。普段の生活に何かしらの突発的な「刺激」が加わったときに、犯罪という行動に出てしまうと考えられるのです。

危険因子にはほかにも、「家庭内の問題」「教育・職業上の問題」「物質使用」「余暇活用」等が考えられており、前述のビッグ4と合わせてセントラル8と呼んでいます。もちろん、危険因子を持っているだけで犯罪者と決めつけてはいけません。ただ、複数の因子が重なることで、犯罪者になる恐れが高まるのは事実です。

一方で、「低い社会階層」「精神的苦悩・障害」「知能」はよく犯罪の原因として挙げられますが、実際には犯罪につながる可能性は高くない因子だとわかっています。

バンジージャンプをしたくなる理由

また、最近の研究でわかっているのが、心拍数が低い人は粗暴傾向が大きいということです。心拍数が低いということは、呼吸数が少ない、つまり交感神経の覚醒度が低いことを意味します。生物学的に見て「不快な状態」なので、暴力や、危険なドラッグを脳が求めてしまう。多くの場合は、スリリングなアトラクションや、バンジージャンプが好きだったりするのですが、常に自分を焚き付けないといけない体になっているので危険です。

ただし、誰かが犯罪者だとわかったときに周囲が「意外だ」と反応するのは、見抜くのがそれほど難しいということです。「危険因子」には注意しながら、ただのレッテル貼りにならないようにしましょう。

(構成=伊藤達也)
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