60歳になるまで下ろせない

またiDeCoには、その他の加入するにあたって注意すべき点もあります。

▼注意点

4.投資で利益がでるかどうかは不確定である。
5.投資において大切な流動性(換金性)がない。
6.対象となる投資商品が少ない。

まず4の「利益がでるかどうかは不確定である」点は、上述の通りです。ただし、利回りが低いものの、定期預金タイプも一部にあります。

5の「流動性がないこと」は、もっとも留意すべき点であると感じます。通常、金融商品は、自分の好きなタイミングで現金化することができます。しかし、iDeCoでは60歳にならないと資金を取り出すことができません。将来手元の資金が枯渇した場合にも、解約することができないのです。頑張って積立をするのはいいのですが、将来の資金計画をしっかり理解する必要があるでしょう。

例えば、子供の教育資金の支払いと住宅ローンの支払いが重荷となる40代や50代の時に、手元にお金がないばかりに、住宅ローンの支払いが滞る可能性も無きにしも非ず、です。教育資金が支払えず、やむなく借入や奨学金を利用する必要がでてくることも考えられます。FPという筆者の仕事柄、定年を待たずに生活資金が足りなくなる相談者の様子を目の当たりにしてきた身としては、将来設計ができていないのに、iDeCoに投資をするという選択をするのであれば、無謀にも思えます。

6の「投資先が少ない」点については、一般的に確定拠出年金の投資対象は20銘柄程度であることを考えると、日本にある数千という投資信託からほんの一部しか投資対象として選ぶことができない点は、ある意味機会損失と言えるかもしれません。

iDeCoは「お金持ち」に向いている

以上、iDeCoについて一般的に言われているメリットについて改めて考え、その他の注意点も検討しました。その結論として言えるのは、iDeCoに適しているのは、高所得者であるということです。所得税率が30%以上あるような方々には、節税効果が大きく、加入するだけで税金が安くなる仕組みは願ったりかなったり。税金が3割安くなるという事は、投資で3割損が出てもいいということと同じです。現在の貯蓄額が多い人も、資金が枯渇する可能性が低いため、iDeCoに向いているといえます。

一方で、所得税が少ない方やそもそも所得税を払っていないような専業主婦を始めとする、無所得者と低所得者は、加入することだけでのメリットは、実は少ないのです。

金融機関各社はサービスを競って、加入者の確保に動いていますが、そもそも自分がiDeCoに向いているかどうかを知ってからでも、加入を検討するのは遅くありません。国や金融機関が加入を推奨する仕組みには、理由があるということを改めて考える必要があります。iDeCo加入者の資金は、60歳まで凍結され、株式相場などに流れていきます。ようやく資金を手にすることができる何十年か先にどうなっているかは、誰にも分らないのです。

iDeCoへの加入を検討されている方は一つの意見として参考にしてください。

高橋成壽(たかはし・なるひさ)
慶應義塾大学総合政策学部卒。「FP王子」の愛称で親しまれるファイナンシャルプランナー。著書に「ダンナの遺産を子どもに相続させないで」(廣済堂出版)などがある。
 
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