マツダが「ファンづくり」のサービス革新に乗り出した。富士スピードウェイで行われた顧客との新しいコミュニケーションとは――。

異彩を放っていた「整備、塗装職業体験」

マツダは去る9月25日(日)、富士スピードウェイの施設全体を活用したブランドコミュニケーション活動の新しい試みに踏み出した。

そのイベントの名称は「Be a driver. Experience at FUJI SPEEDWAY」。

メディアの一員としては、このすべて横文字の名称にどんな略称をつけてよいか悩んでしまう。とはいえ、このイベントの新しさは、従来の一般的に行なわれている「ファン(愛用者)サービス」、たとえば、製品の展示、サーキット走行のデモンストレーション、またユーザーによるレースといった一般的なものだけにとどまらず、つくり手の日々行なっている仕事がどんなものなのか、つかい手としてのユーザーが、疑似的に体で感じられるところにあった。

具体的には、マツダのエンジニア指導のもと、彼らが普段使っている本格的な道具を使って、革製のキーホルダーを材料からつくりだす“モノ造り”体験(もちろん自作のキーホルダーは記念品となる)や、マツダの標榜する“人馬一体”の体験試乗をはじめ盛りだくさん。その中でも、とりわけ異彩を放っていたのが「整備、塗装職業体験」だった。

これは対象を子どもに限定したイベントだ。

「整備」のコーナーを紹介してみよう。まず、マツダのサービススタッフと同じデザインの作業服(つなぎ)を着せてもらえる。参加者はこれだけで嬉しい気分になる。次に整備に使用される本物の工具を与えられ、実際にジャッキアップしたこれまた本物のマツダ車の下にもぐりこむ。そしてアンダーカバー(エンジンルームの下側を保護している樹脂製の板)をはずしたり、ボルトのまし締めをしたりといった車両の整備をするわけだ。

実際に本物のクルマをジャッキアップしてクルマを下からながめそして“触れる”、さらにそれを自分の手で“整備”できるというのは、一般の人間にしてみても経験者は少ないはずだ。というのも、ディーラーの整備工場の現場は、普段、安全上の観点から近づくのは難しいからだ。まして子供にとって、クルマの“お腹”を下からながめるというのは貴重な体験に違いない。おおげさに言えば、そこには全く想像していなかった世界が広がっているはずだ。