本物のワルは「ついでに」アプローチのプロ

ワルは入口をもっとソフトにする。

業者は優しい口調で「本来、3万円の工事ですが、1時間位の工事で、1万円で直せますよ」と、簡易な工事契約を示してくる。家人に「その位の金額で、できるのならば」という思いにさせて、最初の契約をさせるのだ。

しかしながら、リフォーム工事はこれで終わらない。補修後に、ボロボロの木片を見せて、

「中の木がぐしゃぐしゃなので、釘を打てませんでした」
「棟をとめている針金が腐っています」
「瓦にもヒビが入っているものが、何枚もあります」

と不安にさせたうえで、業者は新しい屋根をかぶせる高額な工事契約へと誘ってくるのだ。

なかには、挨拶に行った際、わざと忘れ物をするケースもある。立ち去ろうとする業者に家人が「忘れていますよ」と声をかけたところから、勧誘をスタートさせる。業者は「ありがとうございます」と深々とお辞儀をしながら、親切のお礼とばかりに、

「ついでにお宅の屋根を見ましたが、釘が外れているので、このままだと雨漏りしますよ」

と、家の不具合を指摘し始める。このように、何かの“ついで”というソフトな形で、ワルたちは近づいてくるのだ。

以前に起こった試食商法では、高齢者宅を果物の販売業者が訪れて、「試食してもらえませんか?」とやってきて、果物をナイフで切って、食べさせる。そして、「おいしい」という言葉を家人に口にさせて、値段も言わずに「買いませんか?」と尋ねてくる。

たいした金額ではないだろうと思う家人に「そうね」と答えさせると、一気に1箱1万8000円という市販より高い価格を提示して販売してくる。「高い!」と断っても、すでに家に入り込んでいるので、居座って、押し売りし続けるため、家人は根負けして購入してしまうのだ。

ここでも、「試食をちょっとどうですか?」という軽い提案から、やってくる。

導入が軽い話であれば、相手は業者の言葉に耳を傾けるし、同意もしやすい。それゆえに、悪質業者は入口をソフトにして、話の流れをつくろうとする。