「10月にフィンテックの新しいコンソーシアムをスタートさせる。ブロックチェーンを使い国内外の送金オペレーションを一元化し、24時間運営でコストを大幅に下げ、顧客の利便性を引き上げる新しいシステムを作り上げる。良いことずくめだが、国内では既に全銀ネット、国際的にはSWIFTというシステムが存在するため、これらをつぶしていかなければならない」――。

9月21日、東京・丸の内で金融庁と日経の共催による「FinSumシンポジウム」が開かれた。内外のフィンテック関係者が勢ぞろいしたこの会議で、最も現実的で、実践的な話を繰り広げたのが「地域金融とフィンテック」での北尾吉孝氏(SBIホールディングス代表取締役 執行役員社長)だ。

金融とITの「相乗」、フィンテックで先行するSBIホールディングスの構想を紹介する。

FinTechはコンセプトの時代から実用化の時代に

北尾吉孝・SBIホールディングス代表取締役、執行役員社長

北尾氏はスピーチの前半で、自身の立ち位置について「1999年にSBIホールディングスを設立。以降16年かかったが、世界で初めてインターネットをベースにした金融のコングロマリットを完成させた」とし、「次なる目標として3年以内にフィンテック生態系へ完全に移行することを目指している。SBIホールディングスのグループ各社ではフィンテックはコンセプトの時代が終わり、実用化の時代に入った」と述べた。

「各事業体ではそれぞれ実証実験を進めている。多くのベンチャー企業が、ブロックチェーン、AI、ビッグデータ、IoTとさまざまな要素技術をもってフィンテックの世界に入ってきているが、われわれの使命はこれら技術を持つ企業をコンバインして、システムを作り上げ広げていくことだ」とした。

討論のテーマである地域金融については、「短期的にはマイナス金利で利鞘は大幅に縮小している。地域金融機関同士が株式を持ち合い、あるいはメガバンクが地方銀行の株式を持ち、ぬるま湯につかっている。こんなバカげたことがあるのか?資本は流動化し、有効活用して初めて意味がある。A銀行とB銀行をくっつけても何も新しいものは生まれない。また中長期では人口減少、特に地域の過疎問題がある。50年、100年と営々として築いてきた営業基盤が壊れようとしている。地域創生が叫ばれて久しいが、こうした地域金融機関に対してわれわれは何ができるのか」と地域金融の現状について厳しい視点から問題を指摘する。

ここで北尾氏は2000年、ソフトバンク在籍時代にスルガ銀行と結び設立した「スルガ銀行ソフトバンク支店」のことを改革の前例として紹介した。

「銀行と証券をシームレスにつないだ業務を展開、スルガ銀行の中で突出した営業成績を上げ、あっという間にトップ支店となった」