攻撃してくる人、騙してくる人が寄りつかなくなる

相手が自分に嫌なことをするからと、心の中で恨んだり、憎んだりしたら、今の自分の心の状態が悪くなってしまいます。それでは本末転倒です。しかし、自分が嫌だなと思う存在は、逆に自分を磨いてくれます。そう心をうまく転換することで、過去の嫌なことがすべて良い経験になり、感謝の気持ちになります。そうやって生きていると不思議と自分の将来がいいほうに運ばれていくのに気づくのです。昔は「なんで運が悪いのだろう」と思っていたのですが、その瞬間からスイッチが入ったように、人生が大きく変化しました。

今の自分の心の状態を整えて感謝と反省、そして相手に対する敬意、これらに自分が包まれていると、むやみに攻撃したりする人はあなたの前で小さくなってしまうでしょう。また、騙そうとしたりする人も、自然と寄りつかなくなるものです。

では具体的にはどのようにしたら、そういう状態になるのか、今からお伝えする言葉を3大習慣にしてみてください。感謝の「ありがとうございます」、反省の「すみません」、敬意の「はい」の3つです。メールなどではなく、心の底からきちんと声に出して相手に誠意を持って伝えるのです。

ごくごく当たり前の言葉で拍子抜けしたかもしれませんが、この3大習慣を繰り返して行うことが大切です。お釈迦様の教えでは、同じことを繰り返して努力し続けると悟る可能性があると言われています。例えば、お寺に入ったばかりの修行僧は、初めの頃はお香の匂いがしないのですが、毎日朝夕お務めしていると、1年2年経つ頃には、お香の匂いが衣に染み付いてくるのです。これを「薫習(くんじゅう)」というのですが、同じことを繰り返して心の習慣にすると、だんだんと見えてくるものがあります。

ただし、この繰り返し行う「薫習」も、情熱を失ってしまったのでは、悟ることはできないとお釈迦様は説いておられます。

この3大習慣の「ありがとうございます」「すみません」「はい」を、心からの言葉と笑顔で、ご縁のあるすべての人に伝えてみてください。

慈眼寺住職 塩沼亮潤
1968年、仙台市生まれ。86年、東北高校卒業。87年、吉野山金峯山寺で出家得度。91年、大峯百日回峰行満行。99年、大峯千日回峰行満行。2000年、四無行満行。06年、八千枚大護摩供満行。現在、仙台市秋保・慈眼寺住職。大峯千日回峰行大行満大阿闍梨。新刊『人生でいちばん大切な3つのことば』(春秋社)など著書多数。
(倉橋利江=構成 小倉和徳=撮影)
【関連記事】
声に出して読みたい「般若心経」262字の癒しの世界
目の前のことをただ、やり続けよ――仏教が教える対人関係の奥義
誰の得にもならないのに人を攻撃する人が多すぎる
つらい世の中が楽しくなる!『般若心経』入門
求めない、期待しない。性悪説でいい――キリスト教が教える対人関係の奥義