見込みのない新事業を託されたとき

現場感覚として、どう見てもうまくいきそうにない事業を立ち上げる。そのとき責任者を命じられたらどうするか。プロノバ社長の岡島悦子氏がいう「修羅場」のひとつだ。

岡島氏は過去14年にわたり、企業経営の「かかりつけ医」として年間200人の経営者にアドバイスを行うほか、経営幹部の育成やヘッドハンティングに関わってきた。幹部育成では、幹部候補の選抜から始まり、5年ほどをかけて執行役員クラスの人材を育てている。累計すると、およそ3万人ものエグゼクティブのキャリア形成に関与してきたという経歴だ。

「逆境に耐えて結果を出すのが経営者の仕事です。その力をつけるのは座学では無理。だから私は、できるだけ若いうちに逆境を体験することを勧めています。見込みのない事業であっても、大事なのは試合に出ること。負けゲームも貴重な体験です」

これが岡島氏の哲学である。「もっとも、ただ負け戦に巻き込まれるのではなく、実績を挙げるように努力しなければいけません」(岡島氏)。

ヘッドハンターとして8000人以上の社長と面談してきた経営者JP社長の井上和幸氏は、次のような努力をあげる。

「若手や中堅社員であれば、不本意な指示にも従うしかないでしょう。ただ、プロジェクトリーダーであれば、もっと主体的に動くべきです。その事業が原案通りでは見込みがないと判断したら、『事業化にあたっては、追加してこれだけの条件が必要です。そろわない場合は中止すべきです』と提言するのです」(井上氏)

経営者JP社長 井上和幸 
1989年、早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人事部門、広報室、新規事業立ち上げを経て、2000年に人材コンサルティング会社取締役就任。現在のリクルートエグゼクティブエージェントを経て、10年から現職。著書に『社長になる人の条件』など。
 
プロノバ社長 岡島悦子
筑波大学国際関係学類卒業。三菱商事、米ハーバード大学経営大学院(MBA)、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2002年、グロービス・マネジメント・バンクの設立に参画。05年代表取締役。07年から現職。アステラス製薬などの社外取締役もつとめる。