ユニクロが「新価格」の値下げを断行

消費の最前線に商品・サービスの値下げ・低価格化が連鎖的に広がっている。それは、一向に抜け出せない個人消費の低迷に業を煮やした消費関連企業が、デフレ脱却を掲げたアベノミクスを見限ったかに映る。

安倍晋三首相は6月1日、国民に説得力に乏しい「新しい判断」で、2017年4月の消費増税率10%への引き上げを2年半先送りすると表明した。しかし、消費の現場からは、「とっくに『新しい判断』に切り替えたよ」と、あざ笑う声も響いてきそうだ。

小売業で商品値下げの先鞭を付けたのは、カジュアル衣料のユニクロだった。運営するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は、「官製賃上げ」をはじめアベノミクスの効果から、「値上げは受け入れられる」と判断し、2014、15年と連続値上げを断行した。しかし、値上げに伴う客離れが進み、既存店売り上げが失速したことから、今年に入り、定番商品を中心に「新価格」と銘打ち、値下げ路線に180度転換した。競合他社が価格を据え置いて業績を伸ばしたことも、値下げへの背中を押した。

ユニクロと同じSPA(製造小売業)の米衣料品大手、ギャップが来年1月末までに日本での低価格カジュアル衣料店「オールドネイビー」事業を撤退することを決めたのも、停滞が続く個人消費と無関係といえない。値下げ・低価格化の連鎖は小売業に限らず、さまざまな消費分野に広がっている。

外食はその典型で、牛丼大手の吉野家は4月に、主力の牛丼に比べ低価格の「豚丼」の販売を復活した。ハンバーガーチェーンのバーガーキングも5月に490円のセットメニューを投入したほか、回転ずし大手にも値下げの動きが出るなど、消費者の財布の紐を緩める体力勝負に大きく舵を切るケースは枚挙にいとまがない。