役員=経営陣にまで出世できる人は一握り。部課長止まりの人と、どう違うのか。正念場の行動パターンから読み解いてみよう。

修羅場経験はなぜ必要なのか

使われる側ではなく使う側。企業社会のエリートといえるのが取締役や執行役員だ。そこへ昇りつめるのは、どんな人だろうか。

学歴や職歴、年齢、性別などの属性において、定量的なデータを示すことは可能である。ただ、それだけでは「役員になる人」の顔は見えてこない。

たとえば、ある人があるタイミングで部長に昇進したという職歴の背後には、当人が課長時代にどのような働きをしたかという「行動」の裏付けがあるはずだ。とりわけ、苦境や重圧がかかる場面でどう行動したかは、その後の出世を大きく左右するだろう。

ストレスのかかるそのときに、出世する人はどんな行動を見せるのか。それを知ることで、役員を目指すには何が大切かも見えてくる。

「役員になれる人と部課長止まりの人。その間に、若いうちから一見してわかるような違いはありません。大きく差がつくのは、途中、修羅場の経験をしたかどうかということです」

プロノバ社長の岡島悦子氏はこう断言する。

岡島氏は過去14年にわたり、企業経営の「かかりつけ医」として年間200人の経営者にアドバイスを行うほか、経営幹部の育成やヘッドハンティングに関わってきた。幹部育成では、幹部候補の選抜から始まり、5年ほどをかけて執行役員クラスの人材を育てている。累計すると、およそ3万人ものエグゼクティブのキャリア形成に関与してきたという経歴だ。

プロノバ社長 岡島悦子氏

その岡島氏が、役員になれるかどうかは生まれつきの能力や性格ではなく、仕事上の修羅場を乗り越えたかどうかで決まるというのである。

「たとえば小さな事業を任されたときに、資金繰りが厳しいとか従業員をリストラしなくてはいけないという状況にぶつかることがあります。そうした厳しいけれど、やり遂げなくてはならないことを実行する。あるいは、どちらを選んでも問題含みであることも現実の経営にはよくありますが、そこでどちらを選択するかを判断する。そうした経験を持つことで、経営に対する当事者意識が育つのです」(岡島氏)