介護施設入所を説得することの難しさ

前回は虐待などの問題がない介護施設の見分け方について書きましたが、そうした施設を探し出したとしても、家族にはもうひとつ乗り越えなければならない大きなハードルがあります。

施設への入所を老親にどう切り出し、それを納得してもらうか、です。

元気なうちは「要介護になったら、お前たち家族には迷惑をかけたくないから、老人ホームの世話になるよ」といった話をする人がいます。ところが、実際に要介護になると自分からすすんで施設に入る人はほとんどいないそうです。

介護現場の事情をよく知るケアマネージャーのFさんによると、「私の経験では、施設入所の話が出ると、9割以上の方が拒絶し、それが元で修羅場になることが少なくありません」。

要介護者本人にとって一番安心できる場所はやはり自宅。また、家の「主体」は自分であって、子は面倒を見るのが当然という意識も多かれ少なかれあります。その子どもが「施設に入って」などと言うのは親よりも自分の生活を優先するような気がして許せない。つまり「捨てられる」という被害者意識に陥るのです。

認知症の方であっても拒絶は同様だと言います。

「認知症によってわけのわからない言動をしたり、会話が成立しなくなっても、こういうことはわかるんです。むしろ認知症の方の方が敏感に反応し、泣き叫んだり暴れたりということが多いようです」

具体的にはどのような修羅場があるのだろうか。

「たとえば要介護の親御さんと息子さん夫婦が同居している家庭。息子さんは仕事などを理由に、奥さんに介護を任せてしまうケースが結構多いんです。奥さんは大変ですよ。肉親じゃないから情の結びつきは薄いし、そもそも姑、舅とは折り合いが悪いもの。その相手を介護しなきゃならないんですから耐えられないものがある。で、“もう無理。施設に入れて!”ということになる。でも、息子さんの方は情があるもんだから同意できない。夫婦仲は冷え切るわけです。また、事情を聞きつけた息子さんの兄弟など親族がやってきて、「なんて嫁だ」と。そんなこんなで家庭は崩壊へ向かう。その限界寸前で施設に入れることが具体化するから、本人の意志など確かめてはいられません。“病院に行く”などといった理由でクルマに親御さんを乗せて、そのまま強引に施設に入れてしまうようなことがあるんです」

これでは「棄老」(=姥捨て山)といわれても仕方がありません。