親が傷つかない介護施設入所の促し方の「奥の手」

主体はあくまで要介護者である親であることを心がけて語りかける。

「仕事の関係で、どうしてもこの日はお父さんのそばにいられないんだ。辛い思いをさせてごめん」

「自分がいない時も、不自由な思いをさせたくないんだ」

といったふうに。

施設に頼るのは、結局は家族の都合なのですが、介護者本人のためを思って、という話の方向性と低姿勢を見せることで、ご本人の気持ちを和らげるのです。

また、行った施設で嫌なことがあったようなら、どんなところが嫌だったのかを聞き「そういう問題があるところにはもう絶対行かせない。ケアマネさんにも、それを伝えておくよ」と気持ちに寄り添うようにする。そうした語りかけを根気よく続けることで、施設に対する抵抗感を少しずつなくして行っていくことが大切だそうです。

とはいえ、実際の在宅での介護現場は言い争いは当たり前、場合によっては虐待もある刺々しい空気が漂っているもので、なかなかこうした穏やかな語りかけはできないものですが、施設入所を納得してもらうには、こんな配慮も必要なのです。

Fさんは、老健(介護老人保健施設)への入所によって施設に慣れてもらうのもひとつの方法だといいます。

「老健は病院と介護施設の中間的施設。医師や看護師もいて医療処置が充実しています。リハビリなどを行い体の不調を改善して、自宅に戻ることを目的とした施設です。長期入所は難しいですが、“体を良くして自宅で暮らす”という前向きな方向性があるんです。要介護者はどこかしら不調がありますし、施設と違って病院なら入ることに抵抗感は少ない。“元気になって戻ってきて”と説得すれば入所を納得してもらえる可能性は出てくるでしょう。入所対象者は原則として65歳以上で要介護1以上(40~64歳でも特定疾病に認定された場合は入所可能)。老健も入所待ちはありますが、特別養護老人ホームと比べれば待機者は少ないので、利用を考えてもいいのではないでしょうか」

「医療の必要性」が施設入所の拒絶感を取り除くことにつながるというわけです。

同様に医療を通じた、もうひとつの奥の手があります。

かかりつけ医(主治医)に現在の状況を説明し施設入所を勧めてほしいと頼むのです。要介護者は家族の説得には応じなくても、いつも診てもらっている医師への信頼感はある。その医師に言われれば納得するわけです。医師のなかにはそうしたことには介入したくないという人もいますから、思惑が外れることもありますが。

要介護者に納得してもらったうえで施設入所させることは家族にとって難問であることは確かです。

ともあれ在宅介護に限界が来て、切羽詰った状態で入所を考えるのは本人にも家族にとっても辛い思いをすることが多くなる。なかなかできないことではありますが、親が要介護になった時点で施設入所を視野に入れ、本人との相談も含めて、根気よくその環境づくりをしておいた方がよさそうです。