深夜の“同時多発”排せつ介助とは?

▼虐待のない老人施設を選ぶポイント

前回は、現役ケアマネージャーのFさんと、特別養護老人ホームの元職員Tさんに、介護施設における入所者への虐待の実情と、入所者から介護職員への暴力の存在を赤裸裸に報告してもらいました。今回はその続編です。

「介護施設の虐待」と聞くと、強い立場の職員が弱い入所者を支配しているという構図をイメージしがちですが、そんな状況があるのは一部のひどい施設です。

とくに今回の事件(今年2月、川崎市の有料老人ホームの介護職員が、3人の入所者を投げ落とした事件)は特異な例であって、その報道に接して「どこの施設でも同じようなことがあるのではないか」「施設に入るのが怖い」と思われるのは心外だとFさん、Tさんは言います。

「多くの施設の職員は大変な目に遭いながらも、入所者に寄り添う努力をし、懸命にケアをしています。どちらが強い・弱いという関係性もまずありません。それをわかって欲しいですね」(Tさん)

Fさんは夜勤の過酷さも語ってくれました。

「私が特養に勤めていた時は、夕方5時から翌朝9時までの16時間夜勤をしていました。夜は入所者も寝ているから、大してすることはないだろうと思われるかもしれませんが、そんな穏やかな日はめったにありません」

夜勤は次のような“壮絶”な状況となることもあるそうです。

「大変なのは、“同時多発”の排せつの介助です。通常、オムツをしている方はそれを交換し、立って歩ける方は付き添ってトイレへ行きます。ただ、トイレで介助をしている途中にナースコールが鳴ることがあります。『すぐに戻りますから、ここで座って待っていてくださいね』。そう言って、コールをした入所者のもとに走ります。そこで介助をしていると、今度は“センサーマット”のアラームが鳴る。入所者のなかには、立つと必ず転んでしまう方がいて、ベッドの脇に足を着くとアラームが鳴るマットを敷いているんです。転んだら骨折の危険がありますから、ダッシュ。なんとか間に合い体を支えてベッドに戻すと、ホッとする間もなく最初のトイレの方か、ふたり目の方のどっちに戻るかを判断し、そこに走る。そういうことが連続するんです」