大学卒後も奨学金返済で窮地、未婚の原因に

しかし昨今の経済事情から、生活費や学費を自分で稼がないといけない学生が増えているのも事実で、こちらも何とかしないといけません。真っ先に思い浮かぶのは奨学金ですが、日本のそれが極めて貧弱であることはよく知られています。奨学金とは名ばかりで、実質は返済義務のあるローンです。借金を負いたくないと、利用をためらう学生も少なくありません。

これが万国共通と思うなかれ。図3は、主要国の奨学金の内訳をグラフにしたものです。

高等教育への公的支出額に占める奨学金の割合ですが、注目すべきは率の絶対水準ではなく、給付型と貸与型の内訳です。日本は貸与型が大半ですが、欧米では、給付型がメインの国が多くなっています。フランスとフィンランドは、奨学金の全てが給付型です。

授業料が高いアメリカも、給付型の奨学金を充実させることで、それを補っています。「学費バカ高 & 奨学金返済義務」のダブルパンチを食わせているのは、日本だけです。

といっても、背に腹は代えられぬということで、この「名ばかり」奨学金を借りる学生は増えています。高等教育機関の奨学金貸与人員は、1998年度は50万人でしたが、2014年度では141万人にまで膨れ上がっています(日本学生支援機構調べ)。全学生のおよそ半分です。

よろしくないことに、増分の多くは有利子の第二種となっています。有利子の割合は1998年度では5分の1でしたが、2014年では3分の2です。奨学金の有利子化が進んでいることも看過できません(図4)。

今日では、多くの学生が数百万の借金(有利子)を背負って社会に出ていくのですが、それがもとで生活破綻をきたす者もいます。奨学金という借金が結婚の足かせになる、奨学金を借り得ている人との交際を親に反対される、というケースも報じられています(毎日新聞、2016年2月4日)。

私は前から、奨学金利用増加と未婚化(少子化)の関連を疑っています。

仮にそうだとしたら、言葉がよくないですが、奨学金は社会の維持・存続を脅かす「ガン」ということになるでしょう。

日本は今や大学進学率50%超で、世界でも有数の教育大国です。

しかしその中身は、誇れるものではありません。バイトに明け暮れる学生、奨学金の機能不全(逆機能)など、フタを開けると膿がたくさん出てきます。大学進学率50%といっても、ただ籍を置いているだけの「形式的就学」が多いのではないか、と言われても仕方ありますまい。

これを「学生の質の低下」と切り捨てることができるでしょうか。

問題なのは、学生が学びたくても学べない環境に置かれていることです。なすべきことは、家庭に費用負担を強いる「私依存」型の高等教育の構造を変えることだと思います。

(図版=舞田敏彦)
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