「背理法」という数学の証明法がある。高校で習った人も少なくないのではないか。難しそうに感じるが、意外に簡単で、ビジネスにおいても有用なので、この機会にぜひ覚えていただきたい。
例題。A、B、Cという営業マン3人がいる。そのうち1人だけが商談で成約にこぎつけたのだが、各人は次のように発言した。
A:成約できたのはBではない。
B:成約できたのはCではない。
C:成約できたのは私です。
ただし、発言の内容が正しいのは実際に成約できた1人だけである。さて、誰か――。
とりあえず、Cの発言が正しいと仮定しよう。成約にこぎつけたのは1人だから、この場合、真実を述べているのはCだけということになる。そこでAとBの発言を検証してみると、Bの発言はウソ、Aは本当ということになる。
ここでおかしいと気づくはずだ。この問題の前提は「発言の内容が正しいのは1人だけ」だから、2人が本当というのは矛盾する。つまり、最初の「Cの発言は正しい」という仮定が間違っていたということ。これが背理法である。
「ある仮定をした」→「前提に背く結論が出た」→「だからその仮定は間違いである」という論法だ。
同様に、Aの発言が正しいと仮定した場合、Bも本当のことを述べているので矛盾が生じる。Bの発言が正しいと仮定すると、矛盾は生じない。つまり、成約にこぎつけたのはBということになる。