頭金ゼロで一棟マンションのオーナーになれる時代
3月某日、東京・六本木の中心部にある雑居ビル。その会議室で開かれているセミナーには、40~60代のサラリーマンばかり20人ほどが集まっていた。講師は、不動産投資で年収3億円以上を稼ぐという触れ込みの“投資家”である。
この投資家が、熱く参加者に語りかけている。
「マイナス金利の時代になったおかげで、今は銀行もお金を貸したくて仕方がないんです。こんな時代に賢く投資するには、こんなに低い銀行の金利の資金を使って、高い収益性のビルを買うことです」
「都心はもう物件が高くなりすぎていて、収益率は低くなっていますが、地方は違います。狙い目は、築年数が少し経っていても、賃貸人がしっかりついて回っている人気物件です。こういう物件は非常に安く買えますから、買値に対しての利回りが非常に高いのです」
「こうした居住用の物件は借り手も安定しており、安く買えば利回りは、表面で10%を超える物件もある……」
投資家は、さらに続ける。
「さらに購入する際も、今なら高収益の物件は銀行が頭金ゼロで、フルローンで貸してくれます」
「元手がなくても、一棟マンションのオーナーになれる時代になったんです!」
「安く資金を借りて、収益性の高い投資先へ投資をすれば、その借金の毎月の支払いは賃借人がしてくれるわけです。そして皆さんには、資産ができるんです!」
「賢く、これだけ儲ける方法があるんです。こうして安定した資産を築けば、もう老後や将来への不安もありません。このセミナーでは、特に収益性の高いオススメ物件をいくつかご紹介します。このセミナーだけの特別情報ですよ!」
このようなセミナーが頻繁に開かれるようになったのは、今年1月29日に日銀がマイナス金利政策の導入を決定し、金融機関に融資を強制的に仕向けて以降のこと。開催件数も増え、活況を呈しているというが、一見もっともらしいこの儲け話、本当に鵜呑みにしてよいのだろうか。