眺めて10分。見るだけ暗記法

暗記方法もすごい。

健三選手は、ノートをじっと見るだけで暗記する。暗記というと、ふつうは何回も繰り返し紙に書いたりするものだろう。しかし、健三選手は見るだけ。勝晃さんによれば、見開き1ページを10分くらい眺めて、「よし! 入った」というのだとか。そして、赤い下敷きで隠して覚えているかチェックする。これで終了だ。

白井勝晃さん
鶴見総合体育研究所代表。体操選手として活躍する3人の息子、白井勝太郎・晃次郎・健三選手を始め、数々のトップアスリートを育てた。日本体操協会功労賞他、受賞多数。最新著に『子どもに夢を叶えさせる方法』がある。

こうして暗記したら、すぐに就寝。6時間眠ったあとに、もう1回下敷きで覚えているかをチェックする。脳科学では、寝ている時間は記憶の整理に当てられるというから、その直前に暗記学習をするのは正解だ。さらに翌朝、確認することで記憶の定着を高める効果もある。勉強法を教わったわけではないのに、すべてが理にかなっていたのだ。

「健三が見るだけで暗記できるのは、体操で培った観察力があるのかもしれません。小さい頃から先輩が披露する複雑な体操の技を観察することでその動きを頭に入れ、体で再現することもできる。実は、私も50歳を過ぎて、日本体育協会公認のコーチ資格の取得試験を受けた時、健三の真似をしてノートをとったら、非常にスムーズに暗記できたんです。ノートを取るときに、ある程度で頭に入っているから、覚えやすくなっているのだと思います」(同)

この試験で勝晃さんは、200点満点で140点以上なら合格のところ、177点をマーク。至上最高齢合格という記録も出した。

見るだけで暗記する方法は、家庭教師コンサルタントの坂本七郎氏によると漢字学習で効果があることもわかっている。『プレジデントFamily 2016春号』(現在発売中)ではその方法を紹介しているが、取材時に「漢字を覚えるには空間認知力が関係していると思う」と話していたのが印象的だった。床運動で類い稀な空間認知力を発揮する健三選手が見るだけの暗記法を得意とすることは、そういう能力の高さを証明するものに違いない。