決算書は敷居が高いというビジネスマンも、ここだけ見れば企業の業績がわかるエッセンスを紹介。

同期でも格差が広がっているために、各企業の給与の実態を知ることは容易ではない。ただし、有価証券報告書を提出している企業は、従業員平均年間給与額を開示しており参考になるだろう。前述した「EDINET」では5期分の閲覧が可能だが、過去からの推移を見るのがポイントだ。上昇傾向か否かの判断材料になる。同時に、平均年齢と平均勤続年数もチェックするといい。大量採用といった事態がなければ、年々平均年齢が上がり、平均勤続年数も伸びるのが一般的。平均年齢が40歳前後で、平均勤続年数が15年前後であれば、終身雇用体制に近い会社と見ていいだろう。

社歴があるわりに平均勤続年数が5年以下だったり、年々短くなっているようであれば従業員の出入りが多いと推察できる。いわゆる“ブラック企業”の疑いも出てくる。

給与のアップダウンは、業績に大きく左右されることはいうまでもないが、従業員給与など人件費は、PLの「販売費及び一般管理費」、いわゆる経費に計上される。自社工場を所有するメーカーなどの場合は、売上原価にも計上されるが、ファーストリテイリングを例に経費に絞って話を進めてみよう。

決算書から拾った数字を見ると、ファーストリテイリングの売上高に占める人件費率は、おおよそ12~13%といったところ。その人件費を含めた経費率は、やや上昇傾向を描いており、14年8月期は10年8月期に比べて4.3ポイント上昇。一方、営業利益率は同期間、6.8ポイントダウンである。同社が販売する1000円の商品ごとに経費と儲けをたとえてみれば、人件費や店舗家賃などの経費は354円から397円に上昇、その分、儲けは162円から94円にダウンしたということになる。

ファーストリテイリングが、10年8月期の決算で経費として計上した人件費は1013億円。それが14年8月期は1848億円と、180%を超える伸び率だ。人件費の増加は従業員数が増えたことが最大の要因だが、それでも従業員の平均年間給与は、704万円が736万円にアップ。その間、売上高は8000億円台から1兆4000億円弱へと約170%の伸張である。人件費を含む経費の増加を売上高のアップでカバーしている構図が見てとれるだろう。

売り上げが伸びず、原価の改善も進まないとなれば、営業利益を確保するために、人件費を含む経費を圧縮するのは避けられない。極めて常識的な結論になるが、給料がアップするか否かは業績次第というしかない。

(池田陽介(税理士・池田総合会計事務所所長)=監修)
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