家事育児分業は大正時代「サラリーマン」誕生から

──「イクメン」という語は定着したが、男性が育児をする意識や環境は、なかなか浸透しない。

女性だけが家事育児を担う専業主婦は、男性がサラリーマンとして月給を貰うようになった大正時代に生まれ、高度成長期に広がりました。

1975年以降は共働きが増えていますが、現在、共働き家庭でも女性の家事従事時間は男性の約8倍です。

男性の家事育児が増えない理由は主に、(1)男性の労働時間が長すぎる。(2)男性の時給が高く、女性が家事を担うほうが合理的である。(3)男は仕事、女は家事という役割分担意識に縛られている──の3つです。

グラフを拡大
男性がパートナーに望むライフコース

しかし、最近では男性も女性に働いてほしいと思っています。男性が結婚相手に望むライフコースでは、87年には約38%が「専業主婦」と答えていますが、2010年は約11%に減少し、仕事と家庭の両立を望む人の割合が増えました(グラフ参照)。

例えば男性だけが働いて年収400万円の場合、男性が残業をやめ育児や家事を分担し、その分女性が働いて300万円ずつ稼いだらどうでしょう。

家計収入は600万円に増え、女性は働く機会、男性は育児の機会を得、人生はより充実します。

──専業主婦優遇政策を変えれば、イクメンはもっと増えるか。

ところがわが国には「配偶者控除」と「第3号被保険者制度」という専業主婦優遇政策があるため、女性は育児休業制度があっても第1子の出産で退職し、復職しても優遇政策の範囲に収まる非正規で働くケースが多い。これらの制度を撤廃すれば、主婦たちが雪崩を打って働き始め、イクメンが増えるはずです。

瀬地山 角(せちやま・かく)
1963年生まれ。東京大学教授。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、学術博士。専門はジェンダー論。自身も主体的に家事育児を担う。主著に『お笑いジェンダー論』『東アジアの家父長制』など。