2016年2月27日(土)

労働者派遣法の成立から30年。リーマンショックの衝撃が走った2008年に200万人を突破した派遣労働者は以降、中高年層も吸い込み、現在250万人超。市場規模は実に5兆1000億円余にまで膨れ上がった。

中沢彰吾(なかざわ・しょうご)
ノンフィクションライター。1956年生まれ。東京大学卒業。80年毎日放送入社。アナウンサー、記者として勤務。扱ったテーマは主に環境・住宅問題。2006年、身内の介護のため退社し著述業に転身。著書に『全壊判定』がある。

その派遣労働で中高年が遭遇する“悲劇”を、著者自らの体験で生々しく綴ったのが本書である。

「25年ほど勤めたテレビ局を退社して著述業に転身したのですが、本では食えない。定収が必要でした。58歳では中途採用や契約採用は無理だし、いまさら面接なんて精神的に疲れるだろうからと、昨年、派遣の世界に入ったのです。登録した派遣会社は合計12社、就労した業務は30くらいでしょうか」

派遣労働者は年齢、性別、資格の有無、ブランク期間の程度で評価されるという。ブランク8年で無資格の著者の扱いは厳しかった。本書のあちこちに登場する派遣会社の30代の若い社員たちから浴びる罵詈雑言が凄まじい。

「うるせぇな。おまえ、生意気。何様だと思ってんだ。派遣のクズが」「気持ち悪いな」「もう来るなよ。てめえみたいなじじい、いらねえから」「ほんとにおまえは馬鹿だな」……何とも陰惨な光景だ。

「書名の“ブラック派遣”とは諸々の労基法違反を実行している派遣のことですが、彼らは突然罵倒したわけではなく、周りが大人しいのに私だけがエラそうに労基法などを持ち出したので切れちゃったんですね。彼らも鬱憤を抱えていて可哀そうなんです」

今いる会社にしがみつけ。資格を取れ。20年先の働き口を考えて人脈をつくれ。情報収集を厭うな……著者が得た中高年向けの切実な教訓だ。

2015年に成立した派遣法改正案は、企業が派遣労働者を同じ業務で永続的に就労させることを可能とする。この流れの究極は社員の“総派遣化”である。

「法案が通れば“派遣労働者様の御用達ポスト”ができます。製造業への派遣解禁が第1弾なら、今回の法改正は“第2の地獄への入り口”。そもそも、企業にモラルや善意を期待する日本の派遣制度はおかしい。私は制度そのものをなくすべきだと思いますが、続けるのであればギチギチに規制強化すべきだと思います」

グローバリズムは「口入稼業」で肥え太る。労働法制の根本的見直しが必要だ。

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