2016年2月11日(木)

なぜ人間は“がん”で死ぬのか?

がんを告知されたらするべきこと【4】

PRESIDENT Online スペシャル /PRESIDENT BOOKS

著者
谷川 啓司 たにがわ・けいし
ビオセラクリニック(東京女子医科大学病院関連施設)院長、医学博士

1964年生まれ。防衛医科大学校卒業後、東京女子医科大学消化器外科入局、東京女子医科大学消化器外科医療練士修了。専門は消化器外科、腫瘍外科。米ミシガン大学医学部腫瘍外科において免疫細胞療法、遺伝子治療の研究にsenior research fellowとして従事し、医師・大学院生に免疫療法の研究を指導。東京女子医科大学消化器外科帰局後、外科医としてだけでなく癌免疫細胞療法チームとして癌免疫細胞療法の臨床研究に携わる。東京女子医科大学医学博士号取得後、2001年ビオセラクリニック開設。東京女子医科大学消化器外科講師。

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ビオセラクリニック院長・医学博士 谷川啓司=文
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抗がん剤、病院選び、がんの正体……がん患者さんとご家族が“がん”と“がん治療”の全体像について基本的知識を得る機会は多くありません。本連載では、父と妻を“がん“で失った専門医が、医師そして家族の立場から、がん治療の基本を説きます。

がんが転移しただけでは死なない

病気で亡くなる場合、重要な臓器が機能を失っていくスピードは交通事故のように一瞬で起こることはなく、通常はゆるやかであり、急に亡くなることは稀です。がんの場合も、生命を維持できない理由を満たさなければ、いくらがんが進行しても死ぬ理由にはなりません。多くの人は、がんが進行すれば確実に死に近づくと考えがちですが、いくらがんが進行しても、死ぬ理由を満たさなければ絶対に死なないのです。

『がんを告知されたら読む本』(谷川啓司著・プレジデント社)

それでは、がんが進行して死んでしまう理由はどこにあるのか、例を挙げて見てみましょう。

骨から発生するがんを骨肉腫といいます。どこかよそにできたがんが骨に転移したものではなく、あくまでも骨の細胞ががん化して、骨から塊をつくっていったものです。この骨のがんが進行するとどうなるでしょうか。

骨にできたがんは増殖しながら腫れ上がります。骨を覆っている骨膜を刺激し、今ある正常な骨を破壊しながら大きくなるので、痛みをともなうかもしれません。

しかしそれだけで死に至ることはありません。骨は骨格を維持するために必要なものですが、生きるために絶対に必要な臓器ではありません。ということは骨肉腫の患者さんは、骨にできたがんが進行して大きくなっても、すぐに亡くなってしまうことはありません。

骨肉腫の患者さんが死に至る理由を満たすことがあるのは、肺や脳といった主要な臓器に転移したときです。そこに転移したがん細胞がどんどん増えることで、生きるために絶対に必要な臓器の機能が低下し、生命を維持できなくなる場合があります。

これを別の角度から見れば、骨肉腫がいくら進行して大きくなったり、転移したりしても、生命に関わる臓器に転移・進行して臓器不全にならなければ、死ぬ理由はやってこないということです。

私は、がんが見つかったとき、すでにがんがかなり進行している患者さんを診ることがあります。そのような患者さんは、「先生、私はステージ4なんですよ。もうダメです」と言って、とても落ち込んでいます(ステージというのはがんの進行度合いを示す言葉で、1~4に分類され、数字が大きいほど進行が進んでいます)。「治療していたのに、肝臓に転移した」「肺に転移した」と落胆している人も多く見受けられます。

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