2016年2月1日(月)

日本企業のグローバル化、周回遅れの実態

大前研一の日本のカラクリ

PRESIDENT 2016年2月15日号

小川 剛=構成 大橋昭一=図版作成
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今さら手も足も出ない「日本勢」

2015年10月、「バドワイザー」で有名なビール世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)が、同2位のSABミラー(英国)を約13兆円で買収することで基本合意したと発表した。

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ビール最大手と同2位の合体は、再編のクライマックス。

この合意によってアンハイザー・ブッシュ・インベブ(20.8%)+SABミラー(9.7%)で約30%のシェアを占めることになり、2位のハイネケン(9.1%)を大きく引き離す。(図を参照)この巨大M&Aを産業の独占を規制するアメリカとEUの公取がどう判断するかという大きな問題があるが、放っておけば中国人に買われるのが関の山ということで認可される可能性は少なくない。近年、世界のビール業界は再編に向けた動きが目立っていた。「バドワイザー」と「ミラー」の合従連衡は再編のクライマックスであり、しばらく余波が続きそうだ。

日本国内ではアサヒ、キリン、サッポロ、サントリーの4社が熾烈な競争を繰り広げてきたと言われるが、世界シェアで見ると地ビールなどと同じく「その他」に分類されるレベルにすぎない。キレやのど越し、ゼロだ、フリーだとテイストや健康志向をきめ細かに追い求めてきた日本のビールのイノベーションは世界一だろう。オーストラリアで日本のノンアルコールビールのブラインドテストをやったら、普通のビールとの違いがまったくわからなくてオーストラリア人が舌を巻いたそうだ。糖質ゼロやプリン体ゼロで、しかも美味しいビール系飲料を一生懸命開発しているのは日本のメーカーぐらいのものである。

そうやって国内市場で熾烈な競争を繰り広げて、ふと気が付けば世界はグローバル競争で一変、グローバル化に完全に乗り遅れた日本勢は今さら手も足も出ない――という業界は案外多い。ビール業界はその代表格なのだ。

かつてアサヒビールがオーストラリアのビール最大手フォスターズの株式を20%弱保有していたことがあった。樋口廣太郎さんが社長だった時代で、カナダ最大手のモルソンの買収まで視野に入れていたのだ。だが当時はキリンと激しく鍔競り合いをしていて、買収先の経営に送り込む人材も乏しく、結局は樋口さんの後継者たちがフォスターズの株式を手放してしまった。

海外M&Aで同業他社に先行してきたのはキリンで、ニュージーランドとオーストラリアで過半のシェアを持つライオン・ネイサンを完全子会社化している。フィリピントップシェアを持つサンミゲルや(今は泥沼となっている)ブラジルのスキンカリオールを買ったり、昨年あたりはミャンマーの最大手を買収している。しかし、なかなか利益に結びついていない。

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