アウンサンスーチー氏率いるNLD(国民民主連盟)が11月8日のミャンマー総選挙で圧勝、半世紀以上に及ぶ軍人支配が終焉した。憲法の規定で外国籍の子供をもつ彼女は大統領にはなれないが「私がすべて決定する。大統領に何の権限もない」と言明。1990年にNLDが圧倒的勝利を収めながらも無効とされた「幻の総選挙」から25年、やっとミャンマーに民主派政権が誕生した。

ミャンマーNLD議長 アウンサンスーチー(AFLO=写真)

独立運動の指導者で建国の父、アウンサン将軍の長女。軍事独裁政権下で非暴力民主化運動の指導者として、89年より3度にわたり合計15年近く自宅軟禁され、91年のノーベル平和賞授賞式にも出席できなかった。99年、出国を拒否し、病床の夫、マイケル・アリス氏の死に目に会えなかったエピソードは、彼女の運動への鋼の意志を表している。ただ、「父の暗殺の陰の首謀者と疑われる英国に育てられた民主主義の偶像にすぎない」という意地悪な見方もある。軍出身でありながら実際にミャンマーの政治を民政移管し改革を進めてきたテイン・セイン大統領ほどの政治手腕があるかは不明だ。

その美貌と英オックスフォード大卒のインテリジェンス、建国の父の娘とノーベル平和賞受賞者という圧倒的カリスマ性がこれまでの武器。内閣は内務、国防、国境担当の三相は国軍系となり軍の影響力が色濃く残る。少数民族ロヒンギャ問題など複雑な民族・宗教問題を抱えながら、中国が虎視眈々と狙う地政学的価値も高いミャンマーの未来をどこに導くのか。彼女の真価が問われる。

ミャンマーNLD議長 アウンサンスーチー
1945年生まれ。デリー大、オックスフォード大卒。88年帰国、NLDを結成し総書記に就任。91年ノーベル平和賞受賞。2015年11月の総選挙でNLD圧勝。
(AFLO=写真)
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