2015年12月30日(水)

「マツダ営業方式」自分の道は自分で決めたほうが楽しいに決まっている

マツダ絶好調の秘密はここにある!【5】

PRESIDENT Online スペシャル /PRESIDENT BOOKS

著者
宮本 喜一 
ジャーナリスト

1948年奈良市生まれ。71年一橋大学社会学部卒業、74年同経済学部卒業。同年ソニー株式会社に入社し、おもに広報、マーケティングを担当。94年マイクロソフト株式会社に入社、マーケティングを担当。98年独立して執筆活動をはじめ、現在に至る。主な著書に『マツダはなぜ、よみがえったのか?』(日経BP社)、『本田宗一郎と遊園地』(ワック)や、翻訳書『ジャック・ウェルチわが経営(上・下)』(日本経済新聞出版社)、『ドラッカーの講義』(アチーブメント出版)、『勇気ある人々』(英治出版)などほか多数。

執筆記事一覧

ジャーナリスト 宮本喜一=文
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マツダのロードスター(2015年5月発売)がこのほど「2015-2016日本カー・オブ・ザ・イヤー」(日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会主催)を受賞した。昨年のデミオに続き、2年連続でマツダ車が“最優秀”と評価された。マツダといえば今や、スカイアクティブという独自技術に注目が集まる。しかし、このスカイアクティブを世に浸透させるのには、エンジニアの努力はもちろんのこと、その努力を顧客に浸透させる販売・営業の力も見逃せない。そこには、スカイアクティブを生んだ技術革新と同質の販売革新に取り組む、マツダ独自の挑戦があった。そしてそれは今でももちろん進行形だ。
その実像を知るため、マツダの本社で販売・営業のキーマンに会った。

チームワーク、人材の育成、顧客視点

稲本信秀(当時常務執行役員、現専務執行役員)の呼びかけによって2009年初夏に広島の本社で開始された研究会は、その後約1年間続く。広島や大阪、横浜などのマツダの拠点が開催地となった。この研究会で、国内営業本部は稲本の理念をもとに「マツダ営業方式」具体化作業を行なったのだ。ここで、価値観や行動指針、そして基本活動といったものを、営業部門だけの力で1冊の書物にまとめあげる。M-BOOKと名付けられた。完成は2010年6月。70ページほどの冊子で、現在では全国の販売担当者全員が持っているという。

稲本信秀・取締役専務執行役員

M-BOOKができあがった2010年6月という時期は、ちょうどリーマンショックを乗り越え、マツダの開発陣がそれまで数年かけて開発に取り組んでいたマツダ独自の技術、スカイアクティブの完成についにメドがついたときと重なっている。スカイアクティブは、マツダが取り組んだ「モノづくり革新」「一括企画」といった経営・開発方針から生まれたマツダ車を革新的に生まれ変わらせる技術だった。この年の10月には、スカイアクティブ技術の完成を正式に発表している。つまり、マツダのクルマが生まれ変わる、そのときそのクルマを売る販売部門も販売手法の革新である「マツダ営業方式」を自らの組織に浸透させることによって、スカイアクティブ搭載車の発売を待つ態勢を整えるという作業が開始されたことになる。

「マツダ営業方式」が重視したのは、チームワーク、人を育てるための研鑽・育成、そして顧客視点の3点。とくにこの方式の具体案をまとめていく過程で販売の現場から出てきた要求は、チームワークということばをM-BOOKに入れてほしいということだった。現場も、組織内部の協力態勢の欠如を何とかしたいという思いが強かったからだ。共通の価値観を醸成するうえでもこれは貴重な提案だった。この3点の概念を実践できれば、継続的に営業の成果を上げ、自分たちの幸せにつなげられるはずだ。

稲本は内心、手をたたいて喜んだ。国内営業本部の作業に、現場の人たちが積極的に参画することによって、共同作業に発展している、これこそチームワークではないか。かつての向洋の本社を頂点にした上意下達の雰囲気が徐々に消えようとしている、その実感があった。

2012年2月に発売されたスカイアクティブを全面採用した新世代モデルの第1号、SUVのCX-5が好調に販売を伸ばし、続く同年11月発売のアテンザも快調。これに手応えを感じた販売の現場の空気も大きく変わり、販売担当者も自信を持つようになっていく。

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