2015年10月16日(金)

日本の法人税率は世界屈指の高さなのに、大企業の支払額はなぜ少ないのか

PRESIDENT 2015年4月13日号

著者
富岡 幸雄 とみおか・ゆきお
中央大学名誉教授、商学博士

富岡 幸雄1925年生まれ。45年横浜商業高等学校(現横浜国立大学経済学部)卒業、中央大学大学院商学研究科修士課程修了。国税実査官などを経て65年中央大学商学部教授。欧米留学後、政府税制調査会特別委員等を歴任。著書に『税務会計学原理』『税金を払わない巨大企業』ほか。

中央大学名誉教授・商学博士 富岡幸雄=文 ライヴアート=図版作成 時事通信フォト=写真
1
nextpage

「高い法人税」は実情とはかけ離れている

「法人税の構造を、成長志向型に変える」――安倍晋三首相は今回の法人税改革に当たってこう力説してきた。税率を下げて企業活動を活性化させるというわけだが、その引き下げの有力な根拠は、いうまでもなく他国と比べた際の税率の高さである。

法人企業の所得に対する国税の法人税、地方税の法人住民税、法人事業税の3つの税を合計した法定正味税率は34.62%(標準税率)。確かに、米国の40.75%に次いで世界で2番目に高い。

図を拡大
法定正味税率の引き下げと主要な財源の確保

そこで、2015年度は2.51%下げて32.11%に、16年度は財源となる外形標準課税の拡充分を踏まえ、さらに0.78%以上下げて31.33%以下にする。

さらに政府は、15年度から「数年間で20%台に引き下げる」との目標を掲げており、引き下げ目標の半分以上について、2年間でメドをつけた形である。

この2年間は代替財源を上回る減税幅としており、「企業の賃上げ余力を高め、アベノミクスの恩恵が地方や中小企業などに幅広く行き渡るように促す」ことを目指すという。

しかし、「法人税が高い」という認識は、実は実情とかけ離れている。

国の稼ぎ頭である大手企業は、各々がグローバル市場を舞台に次第に無国籍化してゆき、税制の欠陥や抜け穴を巧みに活用して節税を行い、時には地球的スケールでの課税逃れを行っている。これが、日本の税制の空洞化および財政赤字の原因となっているのだ。

14年3月期の当期利益が上位100位以内にある企業から、「実効税負担率の著しく低い大企業」をざっと概観すると興味深い。

14年3月期の法人の所得に対する税法で定めている「法定正味税率」は38.01%(国税の法人税と地方税の法人住民税、法人事業税の3つを合計した法定の合計税率)であるのに、個別の企業の利潤に対する実際の納税額の負担割合である「実効税負担率」は著しく低いのである。

1期のみの試算ではあるが、実効税負担率がマイナスを示す企業が4社もあり、1%に達しない極端に低い企業が実に10社、5%未満の企業も2社ある。5~10%、15%、20%未満の企業がそれぞれ8社ある。安倍政権が将来的な引き下げ目標として掲げている20%台を、すでに40社が下回っているのだ。

比較的多くの法人税を払っている著名な企業でも、20%台、30%に達していない企業が18社ある。

経済界と大企業、マスコミは「日本の法人税は高い」と大合唱しているが、高いのは法定正味税率であって、実際の税負担は驚くほど低い。

PickUp