米大学教授の“実験台”だった戦後の法人税制

実効税負担率の算定において、持ち株会社を、単体の事業会社と一律に並べて比較することに異議を唱える声もあるが、そんなことはない。そもそも、持ち株会社に対する課税についても、常識的に見て低すぎると私は思っている。

持ち株会社の主な収入源は、関係会社からの配当金である。関係会社はすでに法人税を支払っているから、「二重課税排除」といって、この配当金は課税額からは除外される。しかし完全子会社以外の投資分の配当金に関しても、現在は50%が課税除外となっている。

私は、これは100%課税されてしかるべきだと考える。かつては、この分も課税額からすべて除外されていたが、竹下登内閣が消費税を導入した1989年に20%となった。

当時、NHK「国会討論会(現日曜討論)」で、私は渡辺美智雄・自民党政調会長(当時、故人)に「なぜ全額でなく2割課税なのか、根拠を示せ」と問い質したが、渡辺氏から明確な回答はなかった。もちろん、政治は妥協だということは承知のうえだが、自民党が経団連に「2割くらいは泣いてくださいよ」と泣きついたという推測は容易につく。

この「二重課税排除」がいわれるのは、現在の法人税制が民法学説の「法人擬制説」に拠っているためだ。法人を株主個人の代わり、つまりフィクションとみなすもので、法人を実体のあるものと見なす「法人実在説」と対をなしている。法人税の仕組みは、このいずれに拠るかによって、まったく異なるものになる。

日本の法人税制は、戦後ずっとこの法人擬制説に拠ってきた。これは49年、GHQの要請でコロンビア大学のカール・シャウプ教授を団長として結成された「シャウプ使節団」が作成した報告書、いわゆる「シャウプ勧告」をルーツとする。

実は、シャウプ氏は米国で法人擬制説に拠った法人税制の導入を試みたが、実現には至らなかった。それをマッカーサー司令部が、いわば日本を“実験台”として実現させた。が、戦後70年目を迎えた今もまだそれを引きずったままでいる。