「普通の自治体」は町おこしのために何をしたらいいのか

――この本にはたくさんの村おこし、町おこしの具体的な事例が出ていて面白いのですが、一方でこれを読んだ人は「この本に出てくるようなところと違って、自分たちの町や村はすごく普通だ。うちでは無理だ」と思うのではないでしょうか。特色がない、普通の地域にもできるコツはありますか。

「自分たちの地域じゃ無理だ」と思う人ほど、外の人を連れてきて、部外者の目で見てもらうべきなんです。有識者じゃなく、無名の人でいい。外の人に診断してもらってください。実際、ほとんどの人たちは「うちは普通の地域だから、とても無理だ」と思っているものなんですよ。大事なのは、うまくいかなくても粘り強く続けること。1人連れてきてだめだったら次の人を、それでもダメだったら他の人を連れてきて、外の目で見てもらう。1000やって、2、3個当たればラッキー。原石はなかなか見つからないし、磨き上げるのもとても大変です。それくらいの粘り強さで取り組む必要があります。

『地方創生ビジネスの教科書』(文藝春秋)

和歌山県北原市の「じゃばら」などはまさに「うちには特色なんかない」と思っていた自治体の例です。また、「みがきイチゴ」も1次産業の例ですが、これは被災地でたくさんのものを失って下を向いていた人たちが新しい産業で元気になっていく話です。あと、山形の「スパイバー」はハイテクでこれからの可能性が大きく広がる事例で、大化けするんじゃないかと思っているのです。若い人たちが中心になった取り組みが花咲いている事例は非常にいいなあと思いますね。もう1つの特徴は、イチゴのような1次産業による地域おこしの例を含め、ほとんどの事例でITがキーになっていること。若い人たちはやはりITリテラシーが高いからだと思うのですが、それまでの常識では想像がつかないような、若い起業家が出てきています。

――地方自治体は「(税金を)使う」という文化で、この本に出てくるような「ビジネスをする、稼ぐ」という意識があるところは非常に少ないと思います。また、「平等にしなくては」という意識も強くなりがちで、これも事業を成功させるためにはマイナスですよね。自治体の意識が「稼ごう、ビジネスを成功させよう」という風に変わるのは、どういうターニングポイントなのでしょうか?

中途半端に税収がある自治体は、どうしても「使う文化」になってしまいます。破産した夕張などがまさにそうですが、追い詰められることが最大のきっかけでしょう。あとは民間出身で飛び抜けた首長、若い優秀な首長が生まれたとき。「これまでのやりかたはおかしい」と首長が思うのでしょう、そういうときはターニングポイントになりやすい。

平等意識はやはり強いですよね。もちろん公平原則を働かなくてはならないときもありますが、観光協会や農協といった公的な団体は、みんなを平等に扱おうとする結果、没個性になってしまう。例えば農作物をブランド化して高く売ろうといった場合はこれはマイナスですよね。本来、努力をしているところに果実は落ちるべきです。観光協会もそうです。地域内に飲食店がたくさんあるがどれも平等に同じ扱い……というようだとためになりません。観光協会などのような存在は、公的な存在にせずに切り離してしまうこと、従来のステークホルダーをどこかで淘汰すること、そういったことをトップが決めることが大事です。これはやはり、追い詰められないと難しい。