企業内でSNSを担当できる専門家がいない

当面、急務の課題がこの組織体制整備にある。東急ハンズのように、すでにフェイスブックを実際に活用し、エッジランクの高い企業においてさえも、ソーシャルメディアというものを管理・運営する専門部署は存在せず、順次上がってくる情報を戦略に生かすための仕組みは構築されていないという。

同社ではいまだ、ソーシャルメディアはもとより、IT対応に関しても、多様な部署の人たちが寄り集まって意見を言い合う状態だという。事実、フェイスブックに最も深く関わっているということでお話をうかがった本田氏と緒方氏も、 EC推進課とEC企画課という別個の部署に属している。

フェイスブックページでユーザーに話題のタネを出したり、書き込みに返答したりするのは、気づいたほうが適度にやっている状態という。つまり、権限と責任をもった専門部署に職員が配置され、計画的に運営されているのではないのだ。

この点に関し、熊坂氏はこう語る。

「米国と違って、まだ日本には専門家を雇って、あるいは専門家を育成してコミュニケーションのコストを負担するという感覚がありません。これが最大の問題点です」

同時に、企業内でのフェイスブックに対する意識の共有が甘い点を指摘する。どの立場の人が何に対してどこまで話をするのか(書き込みをするのか)というルールづくりが社内できちんとなされていないというのだ。

確かに、東急ハンズのようなわが国におけるフェイスブック先進企業においてすら、いまだ社内でソーシャルメディアの有効性、ありように関してコンセンサスが得られていないという発言があった。

熊坂氏によれば、「ソーシャルメディアの活用はもう当たり前の時代に入っていて、これを活用しなければ必ずビジネスは衰退してしまう」という。企業において、ソーシャルメディアに対する意識改革とそれに向けた組織体制の整備は喫緊の課題といえよう。