高齢者を狙うニセ電話詐欺、いわゆるオレオレ詐欺や振り込め詐欺の被害総額は2014年、約559億円と過去最高に上った。これだけニュースで報じられ、警察が懸命に注意を促しているのにもかかわらず、被害が拡大し続けているのはなぜなのか。その理由を加害者の側から解き明かしてみせたのが本書『老人喰い』だ。

著者の鈴木大介氏は断言する。「どれほどに警察が彼らの撲滅に尽力してくれようとも、老人喰い(オレオレ詐欺や振り込め詐欺のこと=筆者注)はなくならない。これが彼ら犯罪の加害者取材をしてきた僕の、率直な感想だ」。

ではなぜ老人喰いはなくならないのか。オレオレ詐欺や振り込め詐欺の加害者はどんな人間たちなのか。本書で描かれる詐欺集団の実像は私たちの……少なくとも私の想像をはるかに超えるものだった。

まず詐欺集団は、ターゲットの名簿・情報を提供する名簿屋・下見屋から、ターゲットにニセ電話をかけるプレーヤーたち、受け子と呼ばれる集金係まで高度に専門・分化されている。詐欺の中核部隊であるプレーヤーたちは番頭と呼ばれる統括者のもと、まさに一糸乱れず管理・統率され、洗練された詐欺のテクニックを次々に繰り出してくる。

さらに番頭の背後には金主と呼ばれるスポンサーがいて、アジトの家賃など必要資金を提供するが、金主と接触できるのは番頭だけで、万が一、受け子らが逮捕されても金主にまで捜査の手が伸びるリスクは巧妙に回避されている。

加えて恐ろしいのはプレーヤーたちの高いモチベーションだ。彼らはまるで使命感に取りつかれたように「老人喰い」に熱中する。

生々しい実例やエピソードはぜひ本書でお読みいただきたいが、一つだけ、彼らの高いモチベーションはどこからきているのか本書から引用させてもらおう。閉塞感にとらわれた若者たちをプレーヤーとしてスカウトするため、詐欺集団の幹部が発した言葉だ。

「現代の高齢者の平均預金額は、2000万円だ」「死ぬ時に使い切れずに残すのは、不動産なんかも全部込みの額で平均3000万円だ」「日本中の金を持ってるこいつらが金を使わないから、ますます若い人間は働いても働いても、貧乏から抜け出せねえ」「若い人間が食えなくてヒイヒイ言っている中で、金もってふんぞり返ってるこいつらから、たった200万程度を奪うことに、俺は一切の罪悪感を感じない。むしろ俺はこの仕事を誇りに思ってるよ」

詐欺集団は社会の構造的問題――世代間格差が生み落とした存在であり、格差への怒りがモチベーションの背後にあると言うのだ。犯罪に手を染めるのはどんな場合でも許されないが、著者の言う通りだとしたら、その根絶までは厳しい道のりだろう。