レンゴーは派遣を正社員へ

日本板硝子220億赤字転落。ゴム、パルプは明暗分かれる
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日本板硝子220億赤字転落。ゴム、パルプは明暗分かれる

“派遣切り”が当たり前の風潮の中で、派遣社員約1000人の正社員化を打ち出したのはレンゴーだ。売上高で製紙業界4位、従業員平均年間給与も2003年の660万円を07年には736万円と、ここ数年で80万円近くもアップさせただけのことはある。社外取締役に招いているのは“かんぽの宿”売却問題で騒がれている日本郵政の西川善文社長だ。

業界トップの王子製紙が「需要減退が想定を超えている」と、3月からの取締役・執行役員報酬の20%減額を明らかにしたように、製紙業界にも景気悪化の影響が及びはじめているが、他の素材業界との比較ではまだ限定的。製紙業界は、国際展開で遅れをとっているのが現状。海外売上高比率は、三菱製紙の3割弱が目立つ程度で、主要他社は1割にも満たない。今回の世界同時不況では、自動車を中心にグローバル企業が大きな打撃を受けていることを考えれば、製紙業界は“内向き企業”だったことが幸いしている側面も強い。レンゴーは、業績の下方修正に追い込まれる企業が続出する中で「ほぼ見込み通りに推移」と、09年3月期の増収増益を予想。そうした背景から派遣社員の正社員化を決めたのだろう。

海外売上高比率が75%を超すブリヂストンや日本板硝子を中心とするゴムやガラス、セメント業界は、すでに世界不況のダメージを受けており、今後、給料へ悪影響が及んでくるのは必至の情勢。長く続いた低迷を海外展開やM&Aで乗り越え、これからの給料アップを期待していただけに戸惑いも大きいはず。

高給が代名詞の石油元売り業界にも世界経済の急激な減速、自動車不況の大波が押し寄せている。12月決算の昭和シェル石油は最終赤字に転落。新日本石油も09年3月期の大幅赤字を見込む。在庫評価の影響が大きいとはいえ、業界全体が転機にあることは間違いない。これまでほぼ順調に伸びてきた石油元売り各社の給料への影響は避けられないだろう。新日鉱HDと新日本石油は経営統合を選択。両社とも平均年収が1000万円超だけに、その行方も気になるところだ。

※年収はいずれもユーレット(http://www.ullet.com/)のデータをもとに作成。純利益予想は3月25日時点の決算短信、業績予想の修正より。

(ライヴ・アート=図版作成)