2015年6月12日(金)

スイスフラン暴騰でわかったFXの致命的欠陥

PRESIDENT 2015年3月2日号

著者
鈴木 雅光 すずき・まさみつ
金融ジャーナリスト

オールアバウト「投資信託」ガイド。証券会社勤務後、出版プロデュースを行うJOYntを設立。「投資信託事情」編集のほか、多くのマネー誌などで執筆多数。

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金融ジャーナリスト 鈴木雅光
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久々に「黒い白鳥(ブラックスワン)」(注1)が、マーケットに姿を現した。スイスフランの暴騰である。1月15日、スイスの中央銀行がスイスフラン(以下、CHF)の無制限売り介入を突如、中止したことを受け、それまで1ユーロ=1.20CHFにほぼ固定されていたのが、1ユーロ=0.86CHF前後まで、CHF高が加速したのだ。対円で見ても、1月15日の始値は1CHF=114円台だったのが、一時は157円80銭台をつけ、一瞬のうちに、対円で40%弱も上昇した。

もしCHFをFX(外国為替証拠金取引)で買っていたら、物凄い利益が出たはずだ。証拠金100万円で25倍の取引をしたとき、想定元本は2500万円。1CHF=114円で、約22万CHFの買い「ポジション」(注2)をつくった後、157円に値上がりした際に清算できれば、2500万円の想定元本が3454万円まで膨らみ、瞬時に954万円もの利益を手にできた。

とはいえ、利益を手にした投資家がいれば、必ず多額の損失を被った投資家がいる。実際、CHFが暴騰した翌日以降、「ヘッジファンドのエベレスト・キャピタルがファンドを閉鎖」「ドイツ銀行が約176億円の損失」など、損失を被った企業の名前がニュースに流れ、ネット上では大きな損失を被ったFX投資家の阿鼻叫喚が並んだ。いうまでもなく、この損失は、CHFの売りポジションを持っていた投資家が被ったものだ。

FX投資家の中には、納得のいかない人も多かっただろう。何しろ今回のCHF高は瞬時の出来事だったため、損失額が一定以上に膨らむのを防ぐ「ロスカット」(会社により多少異なるが、預けてある証拠金に対して、「含み損」(注3)が80%に達すると、保有しているポジションが強制決済される)が働かなかったFX会社が多かったからだ。たとえば、預けてある証拠金額が100万円だとしたら、含み損が80万円に達した時点で強制決済され、それ以上損失が膨らまなくなるはず。だが、今回はそれが機能しなかった。

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