2015年6月14日(日)

がん宣告からわずか2週間。「死の恐怖」を振り切った妻

ドキュメント 妻ががんになったら【2】

PRESIDENT Online スペシャル

著者
桃山 透 ももやま・とおる
フリーランスライター

1968年、大阪府生まれ。ビジュアルリテラシー(東京支部)所属。大学卒業後、金融系会社の営業、コピーライター、出版社の編集者、業界新聞の編集長を経て、独立。主にビジネス書、実用書、医学書関連の執筆・編集・監修に携わる。得意なジャンルは整理術、手帳術で、著書に『サクッと1分間 整理・ファイリング術』などがある。

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フリーランスライター 桃山透=文
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がんの治療費への強い危機感

セカンドオピニオンでも厳しい診断を下された妻は、これからどのように病状が悪化し、苦しむことになるのだろうか、最悪の場合……と死の恐怖に囚われる日々を送っていました。そのため、心配で眠れなかったり、泣きたくなったりすることも多かったのです。

1人になりたい、と思うこともよくあった妻ですが、もし自分に残された時間が少ないのなら、娘との時間を極力つくらなければならないと思い直しました。娘はまだ6歳。最悪の場合のことを考えると、自分との思い出を少しでも多くつくってあげたいと思うのも当然です。結果的に、このことがプラスに働き、娘のかわいさに笑顔が増え、妻のほうが助けられたのです。

当時、2カ月ほど前に起こった東日本大震災の犠牲者の方々のことが、メディアで頻繁に取り上げられていました。無念の思いで亡くなられた方々のことを知るたびに、妻は自分がこれからどうやって生きていけばいいのかを考え、また、これまで何も成し遂げていないことに焦りを感じていました。

そんな妻を見ていて、私は妻の「運の悪さ」を嘆きました。特に妻は健康的な生活を心がけていたわけではありませんでしたが、不摂生をしていたわけでないのです。たとえ不摂生な生活を送っていたとしても、妻はまだ41歳です。50歳までにがんになる女性が3%しかいないことを考えても、がんになるには早すぎます。

娘の年齢を考えても、父親の存在よりも母親の深い愛情が必要な時期です。運が悪いにしても、せめて妻の代わりに私ががんになればよかったのに、と思わずにはいられませんでした。

妻の闘病をどうサポートしていけばいいのか、私なりにいろいろと考えてみました。現実的な問題として、いままでの生活費プラス治療費が必要となってきます。ところが、私は収入が不安定なフリーのライターです。お世辞にも稼ぎが多いとはいえません。そのため、稼げるだけ稼がなければならない、という強い危機感を覚えました。

実際、お金があれば、妻が最高の治療を受けることができるだけでなく、家族でおいしいものを食べたり、旅行をしたりして、たくさんの充実した思い出をつくっていくことができます。このようにお金があれば、治療以外にも潤うことは多いのです。

言い換えるならば、どんなに妻を想う気持ちがあったとしても、お金がなければ、結局妻にしてあげられることは少ない、といっても過言ではないのです。そのことがわかっていながらも、妻のことを心配しながら金の亡者のようになるのは、自分に甘く、根性のない私にとってはまるで苦行で、なかなか思うようにはいきませんでした。

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