「残業代ゼロ」で実質400万円減少も!

もう1つの「健康確保措置」ではエグゼンプションを導入する企業は以下のいずれかの措置を選択することになっている。

(1)24時間について継続した一定時間以上の休息時間を与えるものとする(インターバル規制)
(2)健康管理時間が1カ月または3カ月について間の一定の時間を超えないこととする
(3)4週間を通じ4日以上かつ1年間を通じ104日の休日を与える

(1)は仕事が終わってから翌日の始業までの休息時間を設定するものだ。EUではインターバル規制と呼ばれ、11時間の休息時間を付与している。(2)は1カ月ないしは3カ月の労働時間の上限を設定する。量的上限規制と呼ばれている。

休息時間と量的上限の労働時間は省令で規定することになっているので今のところは何とも言えないが、おそらく多くの企業は(3)を選ぶだろう。なぜなら年間休日総数の1企業平均は105.8日、労働者1人平均は112.9日(2013年、厚労省調査)となっている。

しかも休日以外の日についてはインターバル規制や量的上限規制がないために、経営者は長時間労働をさせることが可能になる。そうなれば健康確保措置は絵に描いた餅になる。

その結果、過労死水準と言われる月に100時間の残業(労働時間規制が廃止されるので残業の概念がなくなる)をする人も珍しくなくなるかもしれない。その人は健康被害を受けるだけでなく、実質的に報酬も削減される。

年収要件の1075万円の場合、単純化してボーナスが5カ月分とすれば、月給は64万円弱だ。それを法定労働時間の週40時間、月に換算した160時間で割ると、1時間当たりの賃金は4000円になる。その人がエグゼンプション下で残業代が出なくなり、月100時間の時間外労働をした場合、時給は2460円にまで下がってしまうことになる。この時給をベースにして残業が出ない場合の月給を計算すると約40万円、ボーナスを含めた年収は約680万円になる。つまり、エグゼンプションの対象者になることによって、実質賃金は400万円も減ってしまうということだ。