2015年3月3日(火)

手術中の判断ミスで患者が続けて亡くなれば外科医を辞める覚悟

天皇の執刀医Dr.天野篤の「危ぶめば道はなし」【6】

PRESIDENT Online スペシャル

著者
天野 篤 あまの・あつし
順天堂大学医学部心臓血管外科教授

天野 篤1955年埼玉県生まれ。83年日本大学医学部卒業。新東京病院心臓血管外科部長、昭和大学横浜市北部病院循環器センター長・教授などを経て、2002年より現職。冠動脈オフポンプ・バイパス手術の第一人者であり、12年2月、天皇陛下の心臓手術を執刀。著書に『最新よくわかる心臓病』(誠文堂新光社)、『一途一心、命をつなぐ』(飛鳥新社)、『熱く生きる 赤本 覚悟を持て編』『熱く生きる 青本 道を究めろ編』(セブン&アイ出版)など。

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順天堂大学医学部心臓血管外科教授 天野篤 構成=福島安紀 撮影=的野弘路
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群馬大病院の腹腔鏡手術問題

順天堂大学病院副院長・心臓血管外科教授 天野 篤

群馬大学附属病院(前橋市)で2010年~14年に肝臓がんの腹腔鏡手術を受けた92人中8人が術後4カ月以内に亡くなっていたことが昨年11月に発覚し、大きく報じられました。同じ医師による開腹手術でも09年4月~昨年夏までの5年間に肝臓がんの患者84人中10人が3カ月以内に亡くなったそうです。私は心臓血管外科医であり分野は違いますが、同じ外科医として見る限り、死亡率が腹腔鏡手術8.7%、開腹手術11.9%というのはあまりにも高過ぎます。

この件に関して新聞社のインタビューも受けましたが、このニュースを見たとき、まず考えたのは、この患者さんたちの病状、年齢、体力が手術の対象になるような状態だったのかということです。手術は、回復が見込める患者さんに対して元通りの生活に戻ってもらうために行う治療法であり、勝算がないのに一か八かで実施するものではありません。最近注目されているラジオ波治療など他の治療法はないのか、リスクも含めて患者さんと家族に分かりやすい言葉で丁寧に説明して同意を得なければなりませんし、手術を選択するか慎重に検討すべきです。

この医師のことは知りませんが、外科医としてのモラルの低さには憤りさえ感じます。手術では、術前の診断を十二分に行って臨んでも不測の事態が起きる場合があり、「手術がうまくいった」と思っていても、術後合併症で患者さんの命を失ってしまうことはあります。また、腹腔鏡手術のように新たな高難度手術を開発し挑戦する医師がいなければ外科治療の発展はありません。

しかし、昨今は、新しい治療法、特に保険適用になっていないような治療法であれば病院の倫理委員会の審査を経て臨床試験として実施するなど、慎重な対応が求められます。すぐ開腹手術に切り替えられる体制を整えるなど、患者さんの命を失ったり後遺症を残したりしないように、新しい治療法だからこそ従来の手術以上に万全の体制で臨まなければなりません。

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