集めるべきは「会社への忠誠心が高い社員」

『「後継者」という生き方』牟田太陽著(プレジデント社)

「うちの社員は優秀ですから」と言って、自社の社員の自慢をする後継社長がいる。とにかく仕事ができる人、仕事の能力の高い人をたくさん雇っている会社、仕事の能力だけを考えて採用をしている会社は多いだろうが、そういう人ばかりを集めていれば会社は本当に安泰なのだろうか。

仕事の能力が高い人は、得てしてどこの会社へ行ってもその能力を発揮することができる可能性が高い。どこの会社でも活躍できるとなると、将来的に自社に留まってくれるかどうかわからない。もっと待遇のいい会社へ移ってしまうことは十分に考えられるだろう。

だからと言って、仕事の能力が低いとわかっている人をわざわざ採用する理由はない。ここで考える必要があるのは、「会社への忠誠心が高いかどうか」だ。「仕事の能力」だけでなく、「会社への忠誠心」という2つの基準に照らし合わせて考えてほしいのだ。

「仕事の能力」も「会社への忠誠心」も、どちらも高い人がベストであることはおわかりいただけるだろう。そういう社員を増やすことが後継社長として求められているのは確実だ。ただ、なかなかそううまくはいかない。社員によって能力的にも精神的にもバラつきがあるのは当然だからだ。

もし「仕事の能力」が同じ人が2人いるなら、「会社への忠誠心」の高い人のほうを選んでもらいたい。忠誠心が低いというのは、会社を辞めるリスクが高いということだ。重要なポジションを与えても辞められてしまっては、後々苦労するのは会社だ。しかも実際にある話だが、独立して同業を始めるなどという話や、お客様を持って行ってしまったという話は山ほどある。

単純に「仕事の能力」の高い人ばかりを集めず、その人がどのくらい「会社への忠誠心」があるのか、そこを見極めて「会社への忠誠心」が高い人を集めてもらいたい。