テロ組織IS(ISIL)による日本人人質事件を受け、対外情報機関(日本版CIA)の設置に注目が集まっている。米中央情報局(CIA)や英国秘密情報部(SIS、通称MI6)など海外の諜報機関は日本でもよく知られているが、日本にはそうした海外で諜報活動を行う単独の機関がない。今回の事件でも、人質の情報とISILとの交渉はヨルダン、トルコ政府に任せ切りだった。

その反省から、自民党のインテリジェンス・秘密保全等検討プロジェクトチーム(岩屋毅座長)が日本版CIAの設置に向けた調査を開始することを表明。安倍晋三首相も2月5日の国会で「(日本版CIA設置については)政府でも議論しており、国会の理解をいただけるよう期待したい」と述べるなど、設置に意欲的だ。

戦後の日本は“平和国家”を看板に掲げ、海外での諜報活動は内外からも求められてこなかった。2001年の9.11同時多発テロ事件を契機に、日本でも諜報機関設置が論議されるようになったものの、「警察庁、外務省、防衛省、公安調査庁など関係省庁間の主導権争いが原因でストップしている」(官邸関係者)というのが実態だ。

こうした経緯を踏まえ、安倍首相は「諜報機関をつくるなら、トップは役所への帰属意識が強い人ではダメだ」と周囲にそう漏らしているという。

官邸関係者によると、首相は「警察庁の外事畑出身で国際問題に詳しい北村滋内閣情報官を評価している」とされ、北村氏がトップを務める内閣情報調査室(内調)を母体にした諜報機関を首相が考えているフシがある。北村氏は11年12月に内閣情報官に就任し、今回の人質事件では海外諜報機関とのカウンターパートを務めた人物だ。

だが北村氏率いる内調は警察庁の牙城。内調は、内閣の重要政策に関する情報収集と調査、分析を行う機関で、警察庁、防衛省、外務省、経産省などの出向者からなる混成部隊だが「中核は警察庁であり、外務省から出向の次長に警察サイドが重要情報を上げない、といった噂が絶えない」(内調関係者)のが実態だ。

今回もまた、省庁間の縄張り争いが原因で構想倒れに終わるのか。