世界で一番読まれているこのビジネス書には、成功者たちの数々の知恵と言葉が詰まっている。その意味と仕事に役立つ実践法とは――。

1.誰の目からも自由になる「主体性」を持っているか

徳重徹 テラモーターズ社長

日本の大手損保会社を29歳で辞めて、MBAを取るために渡米。資格取得後はシリコンバレーで撤退が決まっていた日本の投資会社に無給の社長として就任した。そして、帰国後はビジネスの種を探して、2010年に電動バイクを扱うベンチャー企業を立ち上げた――。

こう話すと、小さい頃から主体的に生きてきたと思われるだろう。ところが本当はまったく正反対な田舎の優等生だった。親や周囲の期待を敏感に感じ取った僕は、それを裏切りたくなかった。そして「安定した大企業に入れ」という父親の言いなりに“いい大学”そして“いい企業”へと進んだ。

つまり、自分の物差しではなく、他人の尺度で人生を歩いていたのだ。しかし社会人になって、自分のテイストとか、志向が見えてくると、そうした生き方に違和感を持つようになった。結局は、事なかれ主義の大企業に見切りをつけ「ベンチャー企業を興してみたい!」と、チャレンジすることにした。

僕は、スティーブン・R・コヴィー博士の『7つの習慣』を座右に置き、折に触れひも解いている。このなかの第一の習慣が主体性についてだ。

主体的な人は、自分の天気を持ち合わせている。
雨が降ろうが陽が照ろうが関係ない。
彼らの行動は価値観に導かれており、質の高い仕事をする価値観を持っていれば、天気がどうあろうと関係ない。

自分にあてはめてみると、親や会社といった周囲の目から自由になって、最後には自分がワクワクできる道を選んだ。もちろんリスクはある。父親からは勘当されたし、妻以外は全員反対。起業するまでの10年余りはのたうち回って寄り道もしたが、今会社は、日本のみならずアジアを巨大なマーケットとして動き出している。

主体性を持つということは率先力を発揮するだけではなく、人間として自分の人生に対する責任をとるということである。

僕はコヴィー博士が主張する「主体性を発揮する」を、自分なりに言い換えて、社員には「当事者意識を持て」と言っている。当事者意識を持った人は、たとえ失敗してもそこから多くを学ぶ。

成功させるという思いが強いほど失敗のショックは大きいが、終わったことをクヨクヨと振り返らないことも大切だ。

実を言うと僕は高校生のころ、クヨクヨするタイプの人間だった。300人いる学年で浪人するのは2人だけというなかで、大学入試に失敗。大いに落ち込んだ。アメリカに行くと啖呵を切ったときも、スタンフォードにもバークレーにも受からなかった。だけど、スタンフォードやバークレーに行った日本人はみんなアメリカに残りたいと言っていたのに、誰一人残れなかった。僕は残れた。失敗から湧き出てきた執念がそうさせたのだ。この2つの挫折がなければ、僕は今頃普通のサラリーマンをしているはずだ。

主体的な人はすぐに間違いを認めて自己修正を図り、そこから得られる教訓を学ぶ。
このアプローチによって、失敗は成功のもとになるのである。