森 智紀(もり・ともき) 
1951年生まれ。大学卒業後、一部上場企業に就職。関連会社の役員など定年まで勤めあげる一方で、若い頃からさまざまな投資を体験。画像は海外ファンド購入の際に必要な書類。現在も一般企業に在籍中のため顔は非公開。

「日本人は算数が得意でも、『数字』そのものには本当に弱い。『72の法則』というものがある。元本が2倍になるのにどれだけかかるか、『金利(%)×年数(年)=72』で計算できる」

著者である森智紀氏の投資人生前半戦は負けの歴史だ。社会人1年目、ゴムの先物取引で100万円以上を溶かした。その後も証券会社にすすめられた株を買っては全部負ける。バブル崩壊ではゴルフ会員権は紙くずになり、投資用マンションでは数千万の赤字を出し、物件を販売した知人は雲隠れした。

「バブル崩壊直前に株を売り抜けていなければ、マンションの金利を払うだけの人生だっただろう。バブル後の日本を見回して、今後、株も不動産も下がる一方だなと確信した。そうなると海外投資ということになるが、僕には全く知識がない。もうギャンブルはこりごりだからきちんと勉強しようと思った」

とはいえ、人に聞いても本を読んでも肝心なことがわからない。海外投資をする日本人がまだほとんどいなかったためだ。

「だったら自分自身が詳しくなるほかに道はない。うちの会社は日曜と月曜が休み。土曜の18時に仕事が終わると、羽田空港から20時45分の便で香港に向かい、深夜に到着。日曜は金融機関が休みだから知り合いにいろいろ教えてもらう。月曜は金融機関に話を聞いたあと、深夜便に飛び乗り、明け方の羽田に降り立つ。それから出社」

むちゃくちゃな休日の過ごし方だが、それを年に10回、10年以上続け、自分が納得できるまで徹底的に疑問点を解消した。結果として海外投資に成功している。

「バブルを経験した世代は、投資なんてやってられないという。逆に今の若い人たちはそれを知らないから詐欺みたいな海外不動産やFXで全財産を失う。だから数千年預けても倍にしかならない定期預金に人々が殺到する。世界のファンドには年利9%を複利で回せて、元本保証まで付いてくる優良なものもあるのに、それを知ろうともしない」

この本は短期で大勝ちするための本ではないと森氏は言う。定年後豊かな暮らしを送れるよう、確実に資産を増やすためのものだ。不安を感じたままでいるより、チャレンジ精神を持って、新たな世界でこつこつ増やす。そのためのヒントが詰まっている。