2014年11月24日(月)

なぜ、ごく普通の人が過激な書き込みをするのか

サイバーリテラシー・プリンシプル(12)面と向かって言えないことは書かない

PRESIDENT Online スペシャル

著者
矢野 直明 やの・なおあき
サイバーリテラシー研究所代表

朝日新聞社で1988年にパソコン使いこなしガイド誌『ASAHIパソコン』、95年にインターネット情報誌『DOORS』を創刊、初代編集長をつとめる。2002年にサイバーリテラシー研究所を開設し、「サイバーリテラシー」という考えのもとに、現代IT社会における人間の生き方を模索してきた。この間、慶応義塾大学、明治大学、情報セキュリティ大学院大学、サイバー大学などで教壇に立つ。主著:『マス・メディアの時代はどのように終わるか』(洋泉社)、『インターネット術語集』(岩波新書)、『インターネット術語集II』(同)、『サイバーリテラシー概論』(知泉書館)、『総メディア社会とジャーナリズム』(同、2009年度大川出版賞受賞)、『情報文化論ノート』(同)、『IT社会事件簿』(ディスカヴァー21)。

執筆記事一覧

サイバーリテラシー研究所(代表 矢野直明)=文
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エスカレートしていく罵詈雑言

陰で他人を非難しない、面と向かって言えないことは他で吹聴しない、というのは昔からの処世訓である。ところが今や「面と向かって言えないことをネットで書く」ことが常態化している。攻撃する相手とはまったく面識がないことが多く、ちょっとした話題に便乗して、罵詈雑言の限りを尽くす。言った方は心の靄が晴れたようにすっきりして、それっきり忘れてしまうとしても、言われた方の心には深い傷が残る。ネットでの非難中傷は気にしない(スルーした) 方がいい、と言えなくもないが、口汚くののしる行為は、相手ばかりでなく、当の本人の心も傷つける。

「スマイリー菊地。許さねぇ、家族全員、同じ目に遭わす」
「スマイリー鬼畜は殺します」
「スマイリーから○○(被害者名)をレイプしたと聞いた」
「この菊地って野郎は20年前の(事件名)に関わっている人殺し てめーは いい死に方しねーよ 普通に死ねても 確実に地獄行き 一人の女を無惨に殺しておいて、てめーは行きつけのキャバクラかスナックで人殺しの自慢してたんだよな てめー人間としてどうなんだよ 最低極まりないよな 人殺しを自慢してそれで何になんの? おしえろや おまえ狙ってんのたくさんいるぜ」

これはお笑いタレントのスマイリーキクチさんが、インターネット上で受けた誹謗中傷の例である(彼が2011年に書いた体験記『突然、僕は殺人犯にされた』=竹書房から引用)。

この事件は2009年に警察によって摘発され、19人が身元を特定されたが、彼らは20年も前に起きた都内の女子高生コンクリート詰め殺人事件にキクチさんが関与したと決めつけて、インターネットの掲示板やキクチさんのブログに「人殺し」、「犯人のくせに」などと悪質な中傷記事を書き込んでいた。キクチさんが自分のブログで「自分は犯人でもないし、犯人たちと面識もない。事件には何の関与もしていないし、それをお笑いのネタにしたこともない。すべて事実無根である」と書いても中傷記事は止まらなかった。

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